Kyriba Blog
トレジャリーにおける ChatGPT の活用: 良い点、悪い点、そして怖い点
実験的なチャットボット「ChatGPT」が大きな注目を浴びています。これはトレジャリー・マネジメントにおいても興味深く、場合によっては危険な意味を孕んでいます。当ブログでは、トレジャリー・マネジメントにおける ChatGPT についての良い点、悪い点、そして恐い点についての議論を展開しています。 ChatGPT とは ? ChatGPT は、サンフランシスコに拠点を置く研究所、OpenAI が作成した生成型人工知能 (AI) 自然言語処理ツールです。2023 年 1 月 — そのローンチからわずか 2 ヶ月後には、チャットボットは月間アクティブユーザー数が 1 億人に到達しました。OpenAI と ChatGPT は、Microsoft との価値 10 億ドルの多年間提携を最近結び、更に注目を集めています。 ChatGPT の本質は非常にシンプルで、訓練データを用いて自然言語 (例えば、パラグラフや記事) を書くことができます。ChatGPT は印象的な、会話的な文章を作り出すことができます。ブログ投稿からエッセイ、詩まで、実際の人間が書いたかのように見えるものです。その効率性は高く、最近ではウォートン・スクールの MBA 試験にも合格しました。 Google もこの事に注目しています。ChatGPT は検索エンジンではありませんが、すでにオンライン検索の巨人である Google の競争相手として見られています。Google の経営陣は自社のチャットボットを開発しましたが、最近のデモでは、既に同社の市場価値を 1,000 億ドル減少させるミスを犯しています。 トレジャリーの視点から、ここでは Kyriba がトレジャリー・マネジメントにおける ChatGPT についてより深く理解するために注視しているいくつかの興味深い応用例を紹介します。 支払不正防止 AI が支払不正および支払不正防止のために定期的に使用されていることはよく知られています。生成型 AI は、今では不正者たちのツールボックスの最新のツールとなっています。 サイバーセキュリティ会社の Darktrace は、Fortune の...
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流動性パフォーマンスへようこそ本日、Kyriba は新しいブランディングとともに、胸の高鳴る新たな章を迎えました。この変革は単純にビジュアルを刷新するというのではなく、流動性をビジネスのレジリエンス、迅速性、成長を強力に推進させるものに高めるという私たちのビジョンと取り組みを表しています。 新しいブランディングの中心には 3 つの柱があります。 新しいロゴ – クラシックでありながらシンプルで、スタイリッシュな「K」のロゴマークをあしらいました。これは、お客様が財務管理の複雑性を最善の形で切り拓いていけるようご支援させて頂いた 24 年間続く誇らしい伝統を守りながら、前進するモメンタムを象徴しています。 ビジュアルアイデンティティの刷新 – 新しいロゴを補うのは、刷新されたブランドのカラーパレットです。メインの中間色のチャコールグレー、白、灰色はエクセレンスと信頼性を象徴しています。ポップな配色のネオンイエローとマゼンタは、お客様からの期待に応えるイノベーションと確信を反映しています。 「流動性パフォーマンス」という新しいナラティブ – 財務リーダーのエンパワーメントを実現する私たちの先駆的な取り組みを表しています。 流動性パフォーマンスの新しい時代 今日の不確実性の市場と急速に変化するビジネス環境において、流動性は成長のために不可欠なものとなっています。しかしながら断片化したデータ、マニュアルでの業務プロセス、未連携のシステムが流動性を滞らせ、 CFO と財務担当者にとって長きに渡る障壁となってきました。私たちはこれを「流動性グリッドロック (流動性の渋滞)」と呼んでいます。流動性グリッドロックは、口座単位、会社単位、グローバルでのオペレーション全体で流動性を真に可視化、予測、コントロールすることを妨げます。 私たちのブランドの進化は、流動性パフォーマンスを通じて企業が流動性グリッドロックを解消し、成長とレジリエンスを最適化していく大きな変革の流れを捉えています。 私たちはキャッシュと流動性が正しい場所に、的確なタイミングでシームレスに流れる世界観を描いています。それは、この上なく大胆な夢と戦略を源泉とする力強いビジョンです。私たちの新しいブランドは、流動性はオペレーション上の障壁ではなく、価値創造を最大化する戦略的優位性であるべきという、大胆な信念を体現しています。 そして、財務リーダーが流動性グリッドロックから脱却、データの流れを連携、運転資本を保護、流動性のポジションを正確に予測、戦略を最適化することを真に可能にする唯一のプラットフォームが Kyriba の一元化された流動性パフォーマンスのプラットフォームであると信じています。 競争優位性として流動性の無限の可能性を解き放つことは、私たちのミッションの中核であり、私たちがお客様のために日々たゆまず努力を続ける確かな動機となっています。私は、Kyriba で情熱を持ち、お客様中心志向の仲間たちと共に働くことを大変誇らしく思います。 未来を抱擁する この新たな章を迎えるにあたり、CFO と財務担当者の野心的な目標を実現するご支援を提供できる機会に私たちはエネルギーを感じています。このブランドの進化は、企業が流動性の可能性を活かす方法を改めて形成する変革の動きの始まりを示しています。共に、流動性グリッドロックを解消することができるのです。 流動性を活用してビジネスを強力に推進させる未来がやってきました。 流動性パフォーマンスの時代へようこそ!続きを読む
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将来の展望 : 金融テクノロジーの未来と革新企業と銀行をつなぐテクノロジー 第 5 章 〜 この章では、技術革新が今後の金融業界にどのような影響を与えるかを探り、金融テクノロジーの未来の方向性について考察します。 2040 年の企業のお金の管理 「2040 年某日、出勤してシステムにアクセス、通貨ごとの残高、今日までのキャッシュフローの実績と予実差異分析、明日からのキャッシュフローの予測シナリオ、事業ごとに予算に沿った充分な資金が確保されていることを確認する。 手元の資金から、いくつかの投資提案がされており、実際にあらかじめプログラムしておいた投資条件を満たすものは、指定したファンド、支援企業、研究機関へ自動的に投資処理が行われている。 AI エージェントからは、今日の仕事のスケジュール提案と、来月までに考えておいてほしいことの示唆が。最適解が難しい問題だが、まずは関係者と意見交換して仮説を立ててみるとするか・・・。」 — 2040 年のトレジャラー (資金財務管理者) 現在見えているテクノロジーが成熟したある日のトレジャリー (資金財務) の風景は、このようなものとなるでしょうか。自動化、過去データとシナリオに準じた予測の精緻化、分析性の向上、意思決定の支援、これからのアクションの提案・示唆が得られる。テクノロジーの進歩と、データの蓄積と運用を経た継続的な改善によって、そのようなユーザー体験は遅かれ早かれ、現実のものとなるはずです。 また、テクノロジーの進歩により実現できることはその影響として、現在の仕事の分け方・職務範囲自体も変えていくかもしれません。財務領域では、トレジャリー (資金財務) とコーポレート・ファイナンスがより近しく、直接的に連携する部分も増えてくるかもしれません。 予測可能な未来のシナリオ 未来のシナリオを現実のものとするのは、テクノロジーの進歩のみではありません。技術標準、例えば新しい技術標準化がされたとしても、それが実際に利用され、そこから価値を得られることによってはじめて利用者にとっての恩恵に繋がります。また、活用される中で、より良い使い方が広がり、それが市場に浸透することによって、市場における相互運用性が高まり、また、応用範囲も広がります。 ここでは企業と銀行をつなぐテクノロジーとそれにより実現可されるであろう未来のシナリオを、アプリケーション層も含めて仮説ベースで考察してみたいと思います。 自動化 – 精度向上と適用範囲の拡大 自動化は、システムが利用される上で最も大きな理由のひとつです。企業が銀行から入出金情報等のデータを取得してその結果を集計する、ユーザーの意思決定を支援するレポートとして可視化するといったことは、現在の技術でも実現されています。今後の応用可能性としては、まず、データを取得する際のエラーチェックやエラー対応の自動化が挙げられます。これは、後述の AI (人工知能) の技術とも併用して、これまで人為的に行っていたことを機械で自動化することに転換していく、ある意味機械に引き継いでいく流れが予想されます。 また、データ間の照合をより精緻さをもって行えることも予想されます。例えば、支払・送金データと、その結果としての入出金明細との照合、あるいは、支払の元となる債務データと入出金明細との照合です。企業と銀行間で送受信するファイルフォーマットが新しく、より多くの情報を保持できるようになることで、関連性のある取引を照合できるようになります。また、債務データにおいても、銀行へ送る支払・送金データに引き継ぐ識別情報を保持され、入出金明細にもそれが引き継がれることにより、確実性をもって照合が行えるプロセスが整いますます。そのためには、銀行のシステム内でも識別情報が引き継がれる必要があり、システム運用上の定着化も必要となるでしょう。また、企業システムの観点では、企業全体の業務の流れや利用するシステムの構成を鑑みて、どの業務領域でこの処理を行うのかの最適解を見つけることとなるでしょう。 AI (人工知能) との協働 現在注目を集めている AI ですが、前述の自動化の範囲を学習を以て向上するものとして、また、システム内のデータから得た考察 (としてユーザーには見えるもの) を元に、ユーザーに対して提案や示唆を示すことのできるものとして、AI エージェントは協働者としてそこにある存在となっていくのではないでしょうか。 AI にかかる倫理や法整備についての議論もありますが、企業のパーパスに沿って AI を育成、あるいは論理パターンを方向づけするといったことも予想されます。例えば、AI エージェントが中期計画を理解した上で、それを踏まえたオペレーション上の提案を行うといった具合です。 データの相互運用 様々な企業で共通して必要とされる・運用されるデータが、データプロバイダーから提供されるモデルがより広い範囲に適用されることも予想可能なシナリオです。現在は、為替レートや金利指標といったマーケットデータがプロバイダーから提供されることは一般的ですが、高度化傾向にある情報セキュリティや、より精緻な住所情報を求める支払の標準フォーマットの浸透を考えると、住所情報なども一元的に管理・提供する標準的なプロバイダーが出現する可能性も充分に考えられるのではないでしょうか。 企業間の相互運用性の向上 サプライチェーンの相互運用性を向上する観点で、改めて企業間のシステム連携性が高まっていくかもしれません。サプライヤー (およびバイヤー) を含む経済圏を守り・効率化するサプライヤー・ファイナンスとそれを支える仕組みとしてのシステムの成熟とともに、従来の EDI...続きを読む
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デジタル化時代の金融セキュリティ企業と銀行をつなぐテクノロジー 第 4 章 〜 この章では、金融セキュリティの現状と、デジタル化時代におけるサイバーセキュリティ対策について考察します。 デジタル化と情報セキュリティの高度化 日常的に利用するインターネットやスマートフォンでも、昨今その情報セキュリティが高度化してきている、そのように感じられる方も多いのではないでしょうか。クラウド上にある自分のアカウント情報にアクセスする際に 2 段階認証が (SMS やメール宛に届いたワンタイムパスワードを入力する形で) を求められる、ロボットでないことの確認のためのパズルを解く — デジタルのツールが便利になる一方で、安全性を担保するためのユーザー体験も多様化してきています。 オンライン上でのコミュニケーションや、お金を扱う取引を狙った脅威自体も高度化してきています。なりすましによる詐欺、アクセス情報の剥奪や不正利用 — デジタルでの脅威は、「システムを攻撃するコンピューター・ウィルス」の時代から、「脅威者がデジタルを活用して、個人の資産を脅かす」時代、犯罪自体がデジタル化した時代へとシフトしてているとも言えるかもしれません。そういった状況下において、犯罪自体を裁く上での法整備とともに、脅威から身を守るための対策が極めて重要です。 金融庁のサイバーセキュリティ強化に向けた取組み 金融庁では、サイバーセキュリティを確保し、安心・安全かつ利便性の高い金融サービスの実現のため、2022 年の「金融分野におけるサイバーセキュリティ強化に向けた取組方針 (Ver. 3.0)」において、5 つの取り組み方針を提示しました。 モニタリング ・演習の高度化 – 金融機関におけるモニタリングの実施と、金融業界全体のサイバーセキュリティの高度化の推進 新たなリスクへの備え – キャッシュレス決済やクラウドといったサービス利用のための安全対策 サイバーセキュリティ確保に向けた組織全体での取組み – 経営層の関与下での組織的なサイバーセキュリティの実効性向上、人材育成 関係機関との連携強化 – 警察・公安、海外当局等との連携強化 経済安全保障上の対応 – 政府全体的なシステム利用・業務委託を通じたリスクの対応 総じて、政府機関として金融機関との連携を高め、金融業界としてのサイバーセキュリティの強化を図るものです。その中では、国内の銀行、証券会社、保険会社といった金融機関での情報セキュリティにかかる事案 (インシデント) の把握と管理体制の検証を行うととももに、国を跨ぐ・国際的な事案に対応するための国際的な議論への参画、海外当局との連携、また、海外金融機関の先進事例を参考にしたサイバーセキュリティの高度化を掲げています。 この姿勢は、政府機関としてサイバーセキュリティのベストプラクティス (最善の施策) を模索し、金融業界として相互運用性を高めることにより、脅威への対応という社会命題に向き合うことを示していると言えるのではないでしょうか。 金融機関のモニタリングに関連して、整備が進んでいるのが「電子決済等代行業」、略して「電代業 (でんだいぎょう)」に関する制度です。 電代業に関する制度 「電子決済等代行業」、略して「電代業 (でんだいぎょう)」とは、情報技術を活用した銀行振込や、銀行口座残高等を照会するサービスを提供することを指しています。名称にある「決済」のみに限定するものではなく、情報照会も対象としており、総じてデジタルな手段をもって銀行の情報へアクセスすることを指していると解釈することができます。 電代業の制度では、(1) 登録制の導入、(2) 利用者への適切な情報の提供、(3) 銀行との契約締結義務、以上...続きを読む
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国際標準としての Swift と Host-to-Host 接続企業と銀行をつなぐテクノロジー 第 3 章 〜 この章では、Swift の金融機関ネットワークとホスト間接続の重要性を探り、国際的な金融取引における役割と効果について説明します。 グローバルネットワークと技術標準 経済のグローバル化とテクノロジーの標準化は、相互に影響しながら現代の資本主義の世界を形作ってきました。国境を超える企業間の取引の定常化は、国境を超えてお金を送ること、受け取ることを安全に安心して行える環境が求められ、また、同時に発展する情報技術を活用する上での共通化・標準化を図るために、国際的な銀行間通信のための協会が設立されることとなります。それが Swift で、現在、世界最大の金融機関ネットワークを運営しています。このネットワークには、企業が接続することができます。 一方、中央集権的なネットワークとは別に、汎用的な情報技術をもって、企業とそれぞれの金融機関が直接繋がり合うことも可能となりました。インターネットの発展の中で汎用的な技術となった FTP = ファイル転送プロトコルを用いて、企業と銀行の間を繋げることもできます。FTP で繋がった銀行から、金融機関間が繋がる Swift のネットワークを通じて、世界中の銀行に送金を行うこともできます。企業と銀行とを直接繋げる方式は、一般的に「Host-to-Host (ホスト・トゥ・ホスト) 接続」(略して H2H) または「ホスト間接続」などと呼ばれます。 Swift – グローバル最大の金融機関ネットワーク Swift (スウィフト = 国際銀行間通信協会 = Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication) は、銀行間の国際金融取引を仲介する共同組合で、1973 年に設立されました。Swift により、グローバルの金融機関ネットワークである SWIFTNet が運営されており、このネットワーク自体も通称して Swift と呼ばれる場合もあります。 SWIFTNet へは、金融機関はもとより、企業も接続することができます。接続にあたっては、BIC (ビック = Bank Identifier Code) という法人ごとに一意なコードを Swift より発行します (発行の手続きには、一定の期間を要します)。この BIC...続きを読む
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日本の金融テクノロジー : 全銀システムと ANSER を中心に企業と銀行をつなぐテクノロジー 第 2 章 〜 この章では、日本固有の金融システムである全銀システムと ANSER の機能と役割に焦点を当て、これらが国内企業と銀行間の取引にどう影響しているかを説明します。 情報システムと銀行との繋がり 日本企業の情報システムで、銀行にどれだけお金があるのかを把握したり、お金を振り込んだりすることができるとしたら、全銀協が統括・運営する「全銀システム」か、NTT DATA の提供する「ANSER」の仕組みで繋がっていると言っても過言ではないでしょう。いずれも多くの企業で、実績のある仕組みとして利用されています。直接使ったことがなくても、「ゼンギン」「アンサー」という言葉は耳にしたことがあるかもしれません。 社内の情報システムと銀行とを繋ぐことで、お金の情報を把握し、それを元に会計記帳を行ったり、仕入や売上との照合・消し込み (仕入・売上の情報と実際の入出金が一致していることの確認) を行ったり、社内で必要な口座にお金を動かしたり、仕入先の口座にお金を振り込んだりといった業務を、システム的に行うことができます。また、業務的な情報システムでなくとも、金融機関や金融情報サービス事業者が提供する端末型のサービスを用いて、一元的に銀行関連の業務を行われていることもあるでしょう。 この章では、日本の銀行サービスの技術を支える基盤である「全銀システム」と「ANSER」について少し掘り下げてみたいと思います。 全銀システム – 50 年の歴史、これからの展開 全銀システムは、全銀協 (全国銀行協会) の元、1973 年に稼働を開始しました。銀行口座の入出金明細や振込の情報を、定型化されたファイル形式で受信したり、送信することができます。 全銀フォーマット 全銀システムでは、標準化された固有のファイル形式 = フォーマットを定義しています。標準仕様書の「適用業務およびレコード・フォーマット」を参照すると、32 種類のフォーマット (ファイルの形式であり、取引の種類ごとの形式) が含まれています。 代表的なフォーマットとしては、以下のようなものがあります。 入出金取引明細 – 口座の入出金明細情報 振込振替 (略称:振振 = ふりふり) – 都度形式の振込情報 総合振込 (略称:総振 = そうふり) – 総合 (バルク) 形式での振込情報 給与振込 (略称:給振 = きゅうふり) – 給与支払のための振込情報...続きを読む
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加速するグローバル化と金融テクノロジーのトレンド企業と銀行をつなぐテクノロジー 第 1 章 〜 この章では、世界的な金融テクノロジーのトレンドを探り、グローバル化が金融サービスと取引にどのような影響を与えているかを分析します。 はじめに 本稿では、「企業と銀行をつなぐテクノロジー」をテーマに、企業・銀行間の接続がどのように行われ、利用企業にとってどのようなベネフィットがあるのか、また、何が課題になり得るのかについてを、「日本としてどうなのか」の視点を軸に展開します。また、できるだけ分かりやすく、すぐに読み切れるものとしたいと思います。 この領域は、トレジャリー (資金財務) の分野では一般的に「銀行接続」「バンク・コネクティビティ (Bank Connectivity)」といった言葉で表現されることが多く、企業での財務の観点では、銀行残高や入出金明細の照会、資金移動・送金といった日常業務と深く結びついています。ある意味「空気や水のような存在」— そこに当たり前のものとして存在するものかもしれません。 企業ユーザーが銀行の情報にアクセスする方法には、ウェブブラウザからアクセスする銀行のインターネット・バンキングのポータルサイト、銀行サービスへのアクセスに特化した 端末型のソフトウェア (VALUX 端末等 – 2 章で言及しています)、そして、接続のための仕組みが組み込まれた業務アプリケーション (CMS = キャッシュ・マネジメント・システム、TMS = トレジャリー・マネジメント・システム、あるいは ERP もこれに含まれます) といったものがあります。日常業務で利用するのはいずれかひとつというわけではなく、業務領域や取引先の銀行によって異なることも多いでしょう。 当ブログでは、手段に拘らず包括的にこの領域を扱いつつ、特に企業ユーザーの視点で日々の業務を捉える上で、今後変わり得る可能性を想像し、何かしらの気づきやインスピレーションとなること、また、その先に企業がその目的 (パーパス) を実現するために「お金」を扱う上での創意工夫に繋がることとなればと願っています。構成は、以下 5 つの章で展開しています。 加速するグローバル化と金融テクノロジーのトレンド 日本の金融テクノロジー : 全銀システムと ANSER を中心に 国際標準としての Swift と Host-to-Host 接続 デジタル化時代の金融セキュリティ 将来の展望 : 金融テクノロジーの未来と革新 まず全体感を捉えた上で、日本市場の技術インフラの状況、国際標準やグローバルの状況の現状を整理し、その先にある社会命題としてのセキュリティ、さらに発展的にこれからの未来に何が実現され得るのかについてを掘り下げています。 グローバル化 – 技術と経済、そしてユーザー中心主義 90年代以降、経済のグローバル化は常に情報技術の発展とともにありました。特に 90...続きを読む
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Kyriba、クラウド TMS のリーダーの評価を獲得世界的な不確実性がエスカレートする中、ビジネスは未知のものと常に闘っており、流動性管理を最優先課題としています。2023 年の IDC MarketScape による世界的な SaaS およびクラウド型トレジャリー・マネジメント・システム (TMS) ベンダーアセスメントは、トレジャリー・ソフトウェアの高まる重要性と、完全なベネフィットを享受するための適切なテクノロジーパートナーの選択の重要性を強く証明する内容となっています。 レポートによれば、IDC は Kyriba をエンタープライズおよびミッドマーケットの両方でのSaaS および クラウド型トレジャリー・マネジメント・システム (TMS) のリーダーとして認識しています。このブログでは、IDC の見解を詳しく紹介し、Kyriba がトレジャリーおよびリスク管理システム、企業流動性管理の世界でリーダーと認められる理由を明らかにします。 Kyriba の IDC からの光栄な評価 IDC のレポートにおける基本的な立場は、対立、自然災害、政治的混乱、経済の変動に続く時代に、企業全体の流動性管理がビジネスの重要な救命索として浮上してくるということです。信頼性のある財務およびリスク管理システムは、流動性の管理や現金追跡、プロセスの自動化、報告と規制順守の向上を促進するために必要です。 Kyriba がリーダーとして認識されるのは、単に IDC のショートリスト上の 1 つの位置ではありません。それはリーダーとしての役割を示し、SaaS およびクラウドを有効にしたトレジャリーとリスクマネジメント分野でのその優位性を示すものです。ソフトウェアの提供方法から複雑な機能に至るまでの厳格な基準を持つ IDC MarketScape のベンダー評価は、業界での厳格な基準となっています。それにもかかわらず、Kyriba の位置はエンタープライズとミッドマーケットの両方で常にトップにあります。 エンタープライズでの実力: Kyriba は単なる TMS ではありません。その全体的なソリューションと未来的なインフラストラクチャー、そして比類のないコネクティビティは、エンタープライズの最初の選択としてそれを目指していまじつす。AI による分析、API ファーストのアプローチ、そして厳選されたアプリ・マーケットプレイスをもって、企業の流動性とリスクマネジメントにおける高いスタンダードを設定しています。 ミッドマーケットへの深い理解: ミッドマーケット固有のニーズを認識する中で、Kyriba はその柔軟性と成長の軌跡に合わせてソリューションを調整します。リソースの最適化と迅速な拡大という二つの課題に直面しているミッドマーケットは、Kyriba のソリューションが今日のトレジャリーのニーズだけでなく、将来可能性のある要件も満たすことの可能性を感じています。 図: IDC MarketScape は、2023 年の世界的な SaaS およびクラウド型エンタープライズ・トレジャリーおよびリスク管理アプリケーションで Kyriba...続きを読む
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Kyriba アプリケーションの利用価値を最大化するトレジャリー・マネジメント・システム (TMS) を使用することで、組織はキャッシュフローをモニタリングし、プロセスを自動化し、不正を防ぎ、今日の不確実性の経済下で競争力を保つ上での、情報・データに基づく流動性の意思決定を行うことができます。Bray International は、資金の可視性と予測を向上させるために、Kyriba TMS を選びました。TMS 導入成功後、Bray International は Kyriba プラットフォームの利用拡大を求めました。 この KyribaLive 2023 のパネルセッションでは、Bray International と Kyriba Platinum 認定パートナーの Elire が、TMS の最先端の利用方法に関するインサイトと推奨について明らかにします。 TMS を資金管理に利用する理由 Bray International の財務副社長兼ディレクターの Morty Mandel が新しい役職に就いた際に、次のような質問が次々と寄せられました: 資金ポジションはどうなっているのか? なぜ中国の製造部門に余剰資金があったのか? 流動性計画はどうなっているのか? 銀行との契約を守っているのか? これらの質問に答えるため、Bray International は TMS が必要であると判断、最終的に彼らのトレジャリー・ニーズを満たす全ての機能を持つ Kyriba を選びました。Bray は資金の可視性と予測の基本的なところから始めるつもりでしたが、GL 照合、資金の会計連携、支払など、将来的に対処する必要がある他の問題点も認識していました。Bray は、Kyriba が現在と将来のトレジャリー・ニーズを満たすための適切なソリューションであると確信していました。 TMS 導入の迅速で大きな成果 約 3 ヶ月以内に、Bray International は世界中の 35...続きを読む
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私が Kyriba を選んだ理由今日の急速にビジネスが進化する状況において、財務業務の最適化に取り組む企業にとって適切なトレジャリー・マネジメント・システム (TMS) を選択することが重要です。TMS の選定プロセスは慎重な評価を必要とし、組織固有のニーズと目標が考慮されます。 KyribaLive 2023 のこのパネルセッションでは、Kyriba の戦略的アカウント担当ディレクターである Chris Reynolds が進行役を務め、トレジャリー・マネジメントのエキスパートたちが、なぜ Kyriba を優位性のある TMS ソリューションとして選択したのかについて、その経験とインサイトを共有しました。 自社固有のトレジャリー・ニーズに TMS を合わせる Kyriba について特筆すべき要因の一つは、その卓越したカスタマイズ性でした。Walker and Dunlop の副社長兼アシスタント・トレジャラーである Stephen Kincaid は、Kyriba がそのプラットフォームを彼らの固有の要件に合わせてカスタマイズできることが強みであり、差別化要因であると強調しました。アクセス・プロファイルや詳細画面を含む幅広い設定可能なオプションを持つ Kyriba は、彼ら固有のビジネスニーズに正確に対応するための詳細情報を提供します。 加えて、Stephen は、彼のカスタマイズされたダッシュボードで、銀行残高、銀行より返却されたアイテム、支払へのカスタマイズされた可視性を提供し、彼が即時性をもってアイテムに対応することを可能にすることを強調しました。たとえば、Stephen の支払ダッシュボードでは、支払上の問題を直ちに確認し、解決することができます。彼はまた、銀行別の残高を表示するダッシュボードを作成し、より良いレートを得るために資金を移動する必要があるかどうかを容易に判断できます。 特定の業界で事業を展開する多くの組織にとって、その固有の要件に対応できる TMS を見つけることは容易なことではありません。Stephen は、同業者からの推薦のおかげで、Kyriba が彼らの会社によく適合することを発見しました。この同業者の Kyriba を利用したポジティブな経験と、迅速で効果的なソリューションを提供するという評判は、Stephen が彼らの TMS プロバイダーとして Kyriba を選択する際の信頼性を確固なものとしました。 Bray International が Kyriba を選んだ主な理由も、設定可能性、その一元的なプラットフォームとしての機能・包括的な機能性でした。副社長兼財務ディレクターの Morty Mande は、「カスタマイズの容易さは実際にユーザーに力を与える」と強調しました。 Tam Luu は、不動産プライベート・エクイティファームのトレジャリーを監督する者として、Kyriba...続きを読む
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組込型金融から組込型財務へ : 企業におけるその意味「組込型金融 (Embedded Finance; エンベッド・ファイナンス)」とは、金融サービスを非金融プラットフォームやサービスに統合することで、「必要な時に・必要に応じて」金融サービスを提供することを目指す実践的な取組みです。近過去において、決済、貸付、投資などの金融サービスを利用するためには、銀行を訪れるか、金融サービス提供者のポータルやコールセンターに向かう必要がありました。しかし、ソフトウェア・プラットフォーム、ソフトウェア・イネーブラー、銀行の DX (デジタル・トランスフォーメーション) により、金融サービスは今や非金融サービスの文脈にシームレスに統合、つまり「組込む」ことが可能になりました。これは金融サービスの提供と消費の方法を革新しています。顧客向けの組込型金融のユースケースの中で最も顕著なのは決済です。 消費者の文脈でよく話題になる「組込型金融」や「組込型決済」は、B2B の文脈でも次第に注目を集めています。Bain の 2021 年の推計によれば、B2B の決済総額は 27.5 兆ドルに達し、債権と債務がその価値の 90% を占めています。この量は 2026 年には 33.3 兆ドルに達すると予想されています。組込型決済は B2B 決済量の一桁パーセントを占めています。B2B の組込型決済は、2021 年の 0.7 兆ドル (シェア 2.5%) から 2026 年には 2.6 兆ドル (シェア 7.8%) に増加すると予想されています。ACH が組み込み決済量の大部分を占めており、カードからの一部分が寄与しています。この遷移は、ビジネスシステムやプロセスに金融サービスをシームレスに組み込むことを可能にするオープンバンキングと API の台頭により、ますます可能になっています。 API が存在しなかった頃、金融サービスを既存のビジネスプロセスに直接組み込むことは複雑でした。たとえば、ある銀行からの支払を ERP に組み込むのに 6 ~ 8 ヶ月以上もかかることがありました。この長い市場投入までの時間は、多くの複雑性 (例えば、複数の ERP、カスタマイズ、特化したリソースの必要性やその欠如など) が原因でした。金融サービスを組み込むためのオンボーディング時間と投資は、しばしばその利益を上回っていました。これは複数の銀行との関係を持つ中堅市場や大企業にとってさらに複雑でした。 SaaS モデル (サービスとしてのソフトウェア提供モデル) を利用するソフトウェア・イネーブラーの台頭は、組込み体験を提供する上で重要でした。これらの組込型金融ソリューションは、ホスト間接続を使用してビジネスプロセスに支払や他の金融サービスを可能にすることから始まり、従来の銀行ポータルの役割を減らしました。真に組込みの体験を可能にするために、API...続きを読む
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SVB 破綻から得られる財務の 4 つの教訓シリコンバレーバンク (SVB) と直接的な取引下にある預金や融資に対する CFO の最悪の事態への懸念は、米国政府による同銀行の買収によって緩和されたように見えます。しかし、この危機が終焉したと考える前に、そこから得られる教訓に目を向ける必要があるのではないでしょうか。 そこには、企業の取締役会や財務部門にとって極めて重要な 4 つの教訓があります。: 資金、流動性が得られない・支払ができない状況下での事業継続性が極めて重要であること。 CFO はリアルタイムの流動性計画を必要としており、日締め (1 日の終わり) での把握だけでは、もはや十分ではないこと。 会社として、金利上昇や為替ボラティリティに対する脆弱性を軽減する必要があること。 CFO は銀行カウンターパーティーのエクスポージャーリミットを管理する必要があること。 資金が得られない状況下での事業継続性 3 月 10 日の金曜日 — ほとんどの組織にとって、その日はいつも通りの始まりました。しかし、SVB に関するニュースが広まるにつれ、Kyriba のクライアントの財務担当者は、自社の資金、流動性、支払のチャネルが危機に瀕していると考え、その日中、あるいはもっと長い時間をかけて、業務を行うために新しい代替手段を見つけるべく奔走する必要がありました。 彼らは、Kyriba を使って SVB の資金残高をリアルタイムに把握し、重要な支出を確実に実行するために即時支払 (Instant Payment) を開始し、他の銀行口座に資金を供給し、混乱なくサプライヤーへの支払を完了させました。あるクライアントは、「SVB にあるキャッシュのオンデマンドでの可視化と、キャッシュをすぐに動かせたことで、流動性の惨事を回避することができた。」と話してくれました。 この出来事は、CFO にとって、キャッシュが使えなくなる可能性を想定した事業継続性がいかに重要であるかを浮き彫りにします。災害時の復旧計画では、財務部門が流動性を他の金融機関に移したり、他の銀行でシャドーキャッシュや支払のストラクチャーを維持したすることで即座に対応し、いかなるシナリオが発生しても運用を継続できるようサポートする必要があります。 CFO はリアルタイムの流動性計画を必要としている フォーチュン誌で報じられたように、モバイルとデジタルのバンキング・テクノロジーによって、3 月 10 日だけで 420 億ドルが SVB から引き出されました。前例のない銀行取引のスピードは、携帯電話のせいだけでなく、SNS がさらに伝播を加速させ、混乱に陥った口座保有者の層に、新たなヒステリーを増やすことにもなりました。 リアルタイムでの資金可視化と支払の自動化のケイパビリティを持たない CFO は、オンデマンドの可視化と実行可能性を持つ CFO に追従できず、辛酸を舐めることになりました。 しかし、これは SVB のエクスポージャーを持つ人に限った問題ではありません。CFO...続きを読む
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CFO が財務変革プロジェクトを評価する際に重視する 3 つのリスク要因トレジャリー・マネジメント・システム (TMS) 導入の社内承認を得るためには、その他のプロジェクトと同様、ソリューションの仕組みやその活用方法、プロジェクトのタイムライン、そして費用とその効果 (ROI) などについてきちんと説明することが求められます。もちろん、多くの財務マネージャーは十分な情報を集めた上で、プロジェクトの申請に臨むでしょう。 一方で、CFO にとっての重要な責務であるリスク管理の価値は十分に考慮されているでしょうか。 以下では、財務変革プロジェクトのビジネスケースを作成する際に、なぜリスク管理に焦点を当てるべきなのかをご紹介します。 トレジャリー・マネジメント・システム (TMS) でリスクを軽減する CFO は、CEO とともに、株主、証券アナリスト、そして会社が非公開の場合は投資家/オーナーとコミュニケーションをとります。このコミュニケーションは、会社の経営に対するすべてのステークホルダーの信頼に影響します。そして、サプライズほど、投資家や株主の信頼を損なうものはありません。 予想外の損失、予想以上の借入金、その他の KPI には共通点があり、株主や投資家を驚かせることがあります。投資家の期待に悪影響を及ぼすような変化を事前に察知することは、CFO にとって最優先事項であり、これらのリスクに対処することは、トレジャリー・マネジメント・システム (TMS – 以下、TMS と表記) 提案の焦点となるはずです。 CFO が懸念するリスク要因 CFO が懸念するリスクは 3 つの要因に分けられますが、適切な TMS はそれらを軽減することができます。 その 1: 現在の地政学的・経済的環境における不確実性 投資家の信頼を獲得し維持するためには、財務の強さと分析に確信が持てることが重要です。さらに、組織は状況の変化に応じて迅速に行動できる俊敏さを持つ必要があります。予測の正確さ、予測データの迅速な修正、最新データによるマルチシナリオ比較など、CFO の関心事に焦点を絞って話を進めましょう。現在のプロセスは正確ですか?複数のシナリオのもとで、前提条件の変更を評価し、流動性や資金需要を検証するのに機動的な対応が可能ですか?投資家に対して迅速な対応と信頼性のある数値の提供を行うために、予測の柔軟性、正確性、確実性の向上が必要です。 その 2: サイバー犯罪による財務上の損失 COVID-19 のリモートワークへのシフトによって加速され、犯罪者が企業の重要なシステムにアクセスするリスクは爆発的に増加しています。ランサムウェア、フィッシング、重要な個人データの漏洩などをニュースで見ない日があまりないのではないでしょうか。 ChatGPT のような AI ツールが突然マーケットに登場し、CEO や CFO のスタイルを簡単に模倣できることが証明され、話題を呼んでいます。この手法は、ビジネスメール詐欺 (BEC) でよく使われるもので、従業員に幹部からの指示を受けたと思わせ、通常の手順とは異なる取引を開始させるものです。このため、CFO は、より頻繁に詐欺が行われ、成功する可能性が高いという懸念を強めています。 さらに、攻撃を受けた場合の被害は、実際に金銭が詐取された場合よりもはるかに大きいことが多いでしょう。風評被害は将来のビジネスの成長に影響を与え、売上高の損失は数百万ドルにのぼることもあります。インシデントを特定し、再発を防止するための調査と改善のコストは、資金の直接的な損失をはるかに上回ることがあります。このような攻撃を投資家、顧客、当局に説明することは、会社や CFO のキャリアに不利益をもたらします。 既存の...続きを読む
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データ = 資金予測の秘密兵器過去データは資金予測のプロローグ・基礎情報になり得るのでしょうか? — 統計モデリングと機械学習を使用する場合、その答えは「Yes!」です。CFO や財務担当者は、これまで以上に多くの過去データを利用できます。正しく使用すれば、予測はより正確で行動に移しやすいものになります。 資金予測の精度向上 これまで、企業はシンプルな過去のモデルを使用して将来のキャッシュフローのニーズを予測していました。これは過去のキャッシュフローのパターンを見て、それらを基本的な代数的手段 (ジョークまじりの表現です!) で未来に展開することを意味していました。しかし、この方法は、企業が大量のデータを活用して重要な財務決定を行う必要がある今日の急速に変化するビジネス環境では、もはや完全に実行可能なものではありません。 現在、企業は先進的な統計モデリングと AI を利用してキャッシュフローのニーズを予測しています。このアプローチはより高い精度を提供し、企業に環境の変化に適応する柔軟性を提供します。 今日の市場では、キャッシュフローは実際にビジネスの命綱です。資金繰りが厳しくなる中、給与や取引先への支払といった短期的な責務を遂行することが一部の企業にとっては課題を含むものとなってきています。信用枠を利用したり短期借入をすることが、(海外において) 金利上昇が続く中でますます高コストになっています。 資金予測における課題 予測をどの程度、洗練されたものとするかに関係なく、組織はまず、過去の実績について明確な理解を持つ必要があり、これにより将来のキャッシュフローをしっかりと把握することができます。過去のデータは大量で、内部で作成したシステムやスプレッドシートを使用すると、管理が難しくなることがあります。これらのソリューションが企業の大量の資金データを保持する能力は現実的ではありません。通常、これらのプラットフォームで管理されるデータはとても集約・集計されており、さまざまなアルゴリズムを適切に実行するために必要な詳細なデータが欠けています。 さらに、現代の企業は常に進化し、変化し続けています。つまり、現在のビジネスのキャッシュフローのニーズは、過去のものとは異なる可能性があるのです。 分位数回帰 (Quantile Regression) による資金予測 分位数回帰のような統計的手法は、組織に「説明変数」 (過去データ) の効果をキャッシュの入金と全体的な資金残高 (予測) の分布に対して推定する能力を与えます。これらの説明変数には、会社の口座に入ってくる過去データ上のキャッシュの通貨、入金の日付 (週と月の時間を含む) 、キャッシュにかかる活動の種類、特定の時間範囲での金額などが含まれるかもしれません。分位数回帰を使用して、過去の実績が分布の50 パーセンタイル (中央値) 、75 パーセンタイル (上位 1/4 ) 、90 パーセンタイル (上位 1/10) などにどのような影響を与えるかを推定することができます。 単純な中央値と平均レベルの計算に依存するほとんどの予測モデルとは異なり、分位数回帰は、予測される資金の全分布に対するヒストリカルな実績の影響を推定するために使用できます。これは重要であり、なぜなら、予測される分布は平均や中央値とは大きく異なる可能性があるからです。 例えば、企業の平均と中央値の資金残高を用いると、明日の資金レベルを 600 万ドルと予測するかもしれませんが、ヒストリカルな資金残高の分布は、残高の周期性のために非常に歪んでいます。つまり、過去のいくつかの日は平均や中央値以下の残高を持ち、前期の終わりに向けては平均や中央値以上の資金残高のバッファを持つ日が少数あるかもしれません。他の標準的な予測方法と比較して、分位数回帰は、基礎となる応答変数に対して直線的に関連していない変数の影響をより良く推定し、外れ値 (Outliers) に対してはより敏感ではありません。 分位数回帰の導入 この話題が予測に関する議論にしばしば取り上げられるのは、「万能なアプローチ (one-size-fits-all)」が存在しないためです。加えて、全体の予測に対する要素は、多くの場合、異なる手法と計算モードを使用して導き出されます。 予測プロセスで分位数回帰のような高度な計算を活用する一つの欠点は、それが計算上非常に集中的であることです。これは、予測の精度を保証するために大量のデータとパラメータに依存しています。大量の過去データ、複数の変数 (日付、通貨、キャッシュの分類、地理情報等) にわたる計算は、スプレッドシートのような一般的な予測ツールではとても太刀打ちできません。また、組織が IT 部門や財務部門に在籍する人的リソースを持ってこれらのモデルを自社開発することは稀なことでしょう。 組織はまず、必要なデータにどのようにアクセスするかを見つける必要があります。これは貴社の ERP、貴社の元帳、社内のデータレイク、あるいは貴社のトレジャリー・マネジメント・システム...続きを読む
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財務変革プロジェクトの ROI を見極めるはじめに – 訳者から 財務変革プロジェクトの投資対効果 (ROI) を特定するにあたり、トレジャリー・マネジメント・システム (TMS) を導入した多くの企業に共通する効果として、以下のようなものがあります。 オペレーションの自動化や標準化による「業務効率化・生産性向上」 グループ全体での: 資金・流動性の可視化や資金集約・分配体制の確立による「資金の最適活用」 外国為替や金利のエクスポージャーの把握と迅速なヘッジ運用 決済の効率化 これらはそれぞれ、人的コストや外部管理コスト、財務コスト(資金調達コストやヘッジコストなど)、銀行手数料、送金費用などの削減につながり、収益性の改善に繋がります。そのため、ROI 算出の際に漏れることはあまりないでしょう。 一方で、財務変革プロジェクト全体の価値を評価する上で重要な要素でありながら定量化が難しく、ROI の算出に取り込みにくい定性的な効果もあります。当記事では、そのうち特に重要な 4 点について説明しています。 戦略的パートナーとしての財務部門の確立 業務継続リスクの低減 人的資本の最適化 統制の強化 定量的な効果と、定性的な効果。その両面から価値を捉えることで、財務変革の取り組みが確かな形で定着化し、永続性をもって企業の成長戦略に繋げることができるのではないでしょうか。 Value Engineer 武内 聡 トレジャリー・マネジメント・システム (TMS) 導入のトータルの価値を正しく見極めるにはどうすればよいのでしょうか。財務変革プロジェクトの或る側面は明白に測定されうる一方で、その他の価値構成要素は定量化が難しく、見落とされることがよくあります。財務の取り組みの ROI を評価する際には、価値提案のすべての構成要素が説明されていることを確認することが重要です。 戦略的パートナーとしての財務部門の確立 財務部門はもともと、財務オペレーションの確実な遂行や資金効率化向上を模索しつつ、問題があった際の火消しのような役割を果たしてきました。しかし今では、内部統制や資金リスクの管理といった守りの側面や、資金予測や流動性リスクの分析といった重要な情報の提供など、求められる役割は広く・深くなってきています。そして今後は、財務戦略への提言やその実行をサポートするビジネスパートナーとしての役割がますます求められるようになると考えられます。包括的な財務データと分析ツールにアクセスし、グローバルな流動性の現状・傾向分析を網羅的かつ迅速に提供することで CFO の意思決定をサポートしたり、あるいは資金配分、投資機会、資金調達戦略等に関する価値ある洞察や提案を行えるようになれば、信頼できるビジネスパートナーとしての地位を確立することができます。あなたのチームは、社内の関係者にどのような分析やサポートを提供できるようになるのでしょうか。そしてそれはどのようなビジネス上のアドバンテージを見込めるでしょうか。このような価値を明確にすることが、正確で包括的な投資評価を行う上で重要です。 業務継続リスクの低減 多くの組織では、業務プロセスを確立させて文書化していますが、これはある程度の統制とガイダンスを提供しますが、必ずしもプロセスの全体像を捉えているとは限らず、最新の変更がなかなか反映されなかったり、その例外事項をすべて網羅することができなかったりします。TMS によってプロセスを標準化し繰り返される作業を管理することで、各々の専門知識への依存を排除し、業務の継続性を確保することができます。また、システマチックなプロセスの実施により、現在のプロセスを評価する時間が増え、ベストプラクティスを確立する機会を得ることができます。 現在のチームの構成と、各メンバーの職務範囲について考えてみてください。もし、主要な従業員が退職した場合、業務を円滑に継続できるのか。残ったメンバーで仕事を吸収し、再分配することができるのか、それとも習得に時間がかかるのか。同じ業務品質を途切れることなく提供し続けられる能力は、現状を改善する能力と同じように、投資効果を計算する上で欠かせない要素なのです。 人的資本の最適化 財務部門は、優秀で経験の長い人材で構成されることが珍しくありません。そのような人材がデータの収集や統合といった手作業に時間を費やすことが多いとどうなるでしょうか。 組織の最大の資産である人材を適切に活用できないことは、組織の成長の機会を逃すだけでなく、従業員の士気を低下させ、離職率を高める可能性もあります。 財務プロジェクトの ROI には、オペレーション活動に費やされていた時間を再利用し、より付加価値の高い戦略的な取り組みに活用することで人的資本を最適化する、ということの価値を含める必要があります。チームメンバーがどのように時間を有効に使うことができるか、また、新たな戦略的な取り組みが組織にどのような影響を与えるかについて考えてみましょう。例えば、為替変動の影響を軽減するための為替リスク管理プログラムを評価、作成、実施するために、専門家と協働する時間を確保することができるようになりま す。また、運転資本管理を最適化するために、ダイナミックディスカウントやサプライチェーンファイナンスの構想を開始する機会もあるかもしれません。財務変革プロジェクトが可能にするすべての潜在的なプロジェクトを評価し、ROI 計算の一部として含める必要があります。 統制の強化 軽視されがちな最後の価値要素は、統制強化・管理の一元化です。2022 年に KPMG が 642...続きを読む
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Six Predictions Impacting CFOs in 2023The role of the CFO has become increasingly complex in 2023 as organizations grapple with a more complex set of challenges, including high inflation, FX volatility, a rising opportunity cost of cash, and a need to extract costs from the organization to improve EBITDA. Based on our work with CFOs and their teams to drive...続きを読む
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CFO は通貨ボラティリティにかかわらず収益予測を改善できる為替リスクによるボラティリティ 2023 年のボラティリティと不確実性は、従来の指標や多くの金融機関が今年中にリセッションに突入すると予測・予想するように、一向に冷める気配がありません。来年にかけての米ドルの予測はまちまちですが、変動が激しく、予測不可能であることは間違いないでしょう。金利差から政情不安まで、多くの要因が為替 (FX) リスクに影響しますが、CFO は、為替エクスポージャーが最終的に財務報告結果にどのような影響を及ぼすかを管理するという課題をますます抱えるようになっています。 多くの外部要因や経済状況がその年の業績に影響を与え、CFO がコントロールできないことが多い中、1 つだけ確かなことがあります。為替リスクの結果は予測可能であり、また予測可能でなければなりません。CFO は、ファイナンスリーダーに対して、為替リスクを可能な限りコスト効率よく軽減する方法を伝授することができます。 外部からの脅威や経済の不確実性が多い中、CFO は自分たちの力で結果と財務結果を管理する必要があります。為替リスクは「未知」あるいはヘッジが不十分なリスクとして、テーブルから外すべきです。 CFO が不確実性に対抗する方法 為替変動による影響に効果的に対処・管理し、効果的な意思決定の能力を高めるために、CFOは自社で利用可能なテクノロジーを拡大することができます。FXテクノロジーの主要な推進力は、1) 異なったシステムや法人格による障害の除去、2) エクスポージャー/リスク識別のための不正確で非効率な方法の標準化と変換、3) FXリスク管理決定の最適化(コスト効率の良い軽減、効果的な結果)です。基本的に、FXリスクの軽減は、正確でタイムリーなデータとインテリジェントな定量的決定を行う能力とを組み合わせることから始まります。 財務の障害となるものを取り除く 効果的なリスクマネジメントを阻害する要因の1つは、エクスポージャーの情報が不完全に把握されていることです。CFO が影響を及ぼし、チームに好影響を与えることができる重要な分野の 1 つは、様々な法人やエクスポージャを生み出す様々なシステムからの情報を統合・集計する方法を提供することです。為替リスク・エクスポージャーに関連する統合された一貫性のある情報を、新たに買収した企業やビジネス・ユニット、複雑な法人構造にわたって集約することは困難です。ほとんどの場合、統合や同期が非常に困難な異種システムが関係しているだけでなく、基礎となるデータが調和されておらず、合理化されていないのです。CFO は、可視性向上、リスク分析、タイムリーな報告のために、チームが財務システム全体にわたる情報に迅速にアクセスできるよう、テクノロジーから着手する必要があります。 リスクの特定を合理化する 最近、あるリスク・マネージャーと話しました。その組織は、月に 1 度、決算の時にしかアクセスできない信頼性の低いデータのために、ヘッジができません。当然ながら、企業は根本的なリスクに関する正確な情報を持っていなければ、効果的なリスク軽減を行うことはできません。しかし、仮にデータが正確であったとしても、決算後の月に 1 度しか閲覧できないというタイミングの問題から、リスクを効果的に軽減することはできません。しかし、データが正確であると仮定しても、月次決算が終了した時点でしかデータを見ることができないため、効果的なリスク軽減策を講じることができません。エクスポージャとデリバティブのデータの収集と整理を自動化し、高速化するテクノロジーは、企業に迅速で適切なデータを提供し、変化や傾向を分析・調査する機会をタイムリーに与えることで、こういった問題を解決します。 最適なヘッジの意思決定 ヘッジはしばしば必要ですが、どのような場合にヘッジが過剰になるのか、あるいは不十分なのでしょうか? 頻繁に調整が必要で、適切なレベルでヘッジする機会を逃していないでしょうか? また、どのような水準でヘッジを行うべきか、不明な点はないでしょうか? 今日の SaaS のリスクマネジメント・ソリューションは、自然なオフセットの機会を分析し、企業のリスクマネジメント目標を達成するために必要な外部ヘッジの量を削減する機能を提供します。特定された残りのリスクについては、シナリオ分析やヘッジのリスクと関連コストの両方を評価できるようにすることで、柔軟性を高めています。これにより、企業はエクスポージャーのポートフォリオ内で通貨間の相関関係を利用することができ、ヘッジの総コストを削減することが可能になります。 急激な状況変化に対応するために 経済状況が急速に変化する中、CFO は競争力を維持し、変革を実現するための方法を模索しています。CFO と財務チームは、競合他社に取り残されないように、もはや異種システムや様々なレベルのテクノロジーに依存することはないでしょう。より深いエクスポージャーの取得、取引管理、分析機能を備えた先進のクラウドベースの SaaS テクノロジーへの投資により、CFO は真の変革を実現し、進化した財務担当者の能力、プロセス改善、システム価値を財務および組織全体に提供することになるでしょう。要するに、CFO は変化する為替環境に対応する必要があるということです。通貨リスクはビジネスにとって有用なツールですが、同時に課題ももたらします。もし、これらの課題にどのように対処したらよいかわからない場合は、[email protected] までご連絡ください。Kyriba の受賞歴のあるソリューションが、CFO や財務担当者にとって、どのように 為替リスク管理の価値と洞察を高めるかについて、より詳しく知ることができます。 (原文) CFOs Can Improve Earnings Predictability...続きを読む
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インフォグラフィック: デジタルトランスフォーメーション ビジネスへの影響を評価Kyribaバリューエンジニアリング: 現在の状態と将来の状態の総価値を記録するための、検証済みの協力的な価値評価。 PDFをダウンロード続きを読む
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急激な円安進行の環境下、トレジャリーによる PMI (ポスト・マージャー・インテグレーション) のススメ急激な円安進行 2022 年 7 月 15 日に 1 ドル 139 円台と、24 年ぶりの円安水準に進行しているとのニュースがありました。春先から続く急激な円安進行について、様々な要因が報じられ、今後更に円安が進行するとの見方もあり、日本経済及び企業経営への影響が懸念されています。 また、先日、円安の影響は日本企業の海外 M&A にも影響を及ぼしているとの報道も目にしました。急激な円安が、国境を跨ぐ企業の合併・買収に影響する可能性が出てきたとのことです。ブルームバーグによると、2022 年の日本関連 M&A の総額は、2022 年 6 月 10 日時点で 2021 年同時期と比べて13% 減、件数ベースでは 17% 減と、ともに減少していることがわかります。同社記事内で、みずほ証券のコメントでは、「現時点では、クロスボーダー案件において、円安を理由にした見送りだと具体的に説明されている案件はあまりない」と指摘しつつも、「日本企業の海外企業買収が従来比スローなので、円安の影響もあるのではないか」として、一部で為替要因が顕在化している可能性にも言及されていました。 経営戦略のツールとしての M&A 日本企業においても欧米企業と同様に、M&A が経営戦略のツールとして浸透しています。戦略的投資資金枠を設け、中期経営計画で M&A への積極的な姿勢を表している企業も珍しくありません。ブルームバーグのデータが示すように、日本企業は海外事業の成長を、海外企業の買収を梃子にノンオーガニックグロースを目指す姿勢を続けてきました。 私にはこの先の為替相場の動向について予測することはできませんが、歴史的な円安が進行する中、多くの日本企業がクロスボーダー M&A の実行を見送るのではないかと考えます。円安の影響で買収価格が相対的に上昇し、かつ上昇した分のプレミアを買収対象企業の将来キャッシュフローで回収するにしても、VUCA の時代と言われる現在においては、その将来キャッシュフローの見通しの蓋然性が、買収実行時において見極めが難しい状況にあると考えられます(原料や資源・エネルギー高の価格転嫁の成否、サプライチェーンリスク等)。 そのような経営環境において、海外展開を進めてきた日本企業は、新規買収の継続ではなく、一旦立ち止まって、過去に買収した会社(以下、買収会社)に対して PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション、Post Merger Integration)が十分にできていないのであればその PMI にしっかりと取り組む良いタイミングではないかと思います。 PMI に取り組み、シナジーを発揮させ、新たにキャッシュフローを創出することができれば、そのキャッシュの日本への還流において、円安環境下では有利な地合いにあるとも言えます。 PMI においてトレジャリーは何をするべきか ではそのPMIにおいて、トレジャリーは何をするべきか、大きなテーマとしては二つあると考えます。 一つ目は、既存のグループファイナンスやキャッシュプーリングのスキームに買収会社を参加させることです。購買・生産・販売等の領域でのPMIが進めば、買収した会社でも新たにキャッシュが創出されます。そのキャッシュを別々の財布で管理するのではなく、一つの財布で管理することで、世界的な金利上昇局面において、資金需要(特に外貨需要)に対する資金調達を金融機関に頼ることなく、グループの中で自由に使える成長資金が増え、トレジャリーがさらなる成長戦略の実現を支援できます。 二つ目は、買収会社への財務ガバナンスの強化です。これまでニュースで報じられている日本企業の不正事例を見ると、その多くが子会社や孫会社、それも海外の子会社や孫会社で起きています。つまり、不正リスクのエクスポージャーは、海外グループ会社にあるといってもおかしくないのです。これに加えて、買収会社は文化もDNAも異なることから、ガバナンスの強化の重要度は高いと言えます。買収後、現地の経営は現地に任せっぱなしにしていることが多く、そのため、本社の目が届きにくい買収会社は不正の温床になりやすいとも言えます。 トレジャリーによる統制 不正の影響は最終的にはおかしなキャッシュの動きに現れ、そのキャッシュを直接的に管理するトレジャリーによる統制が有効な防止策となります。具体的には、トレジャリーは不正が起こる機会を作らないための仕組み作りである予防的統制と、不正をいち早く発見し是正する発見的統制の両側面から、財務ガバナンス強化に向けての施策に取り組むべきであると考えます。 発見的統制は、グループの資金ポジションの可視化やグループの資金予測の予実分析に取り組むことで不正によるおかしな資金の動きを速やかに検知することです。 予防的統制は、そもそも不正な支払が行われないように、一人で資金を動かせないようなグループ会社の支払業務を統制することです。...続きを読む
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インフォグラフィクス: 不確実性の時代に確実な措置を将来を予測するエンタープライズ・リクイディティ・マネジメント (ELM) で複雑性、ボラティリティ、膨大なデータに挑む — パンデミック、地政学的緊張、不安定な金融市場により、世界中でボラティリティが加速・激化しています。 インフォグラフィクスをダウンロード IDC ホワイトペーパーを読む (英語)続きを読む
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CCC (キャッシュ・コンバージョン・サイクル) 改善の意義ROIC の指標としての CCC ここ最近、企業経営計画や統合報告書において「ROIC (Return On Invested Capital: 投下資本利益率, ロイック)」に言及しているものを多く目にします。ROIC は、事業やプロジェクトごとの投資の適格性や、想定した収益力を実現できているかを示す財務 (の効率性) 指標のひとつです。事業部ごとの目標 ROIC を設定し、その達成度合いを役員の評価に織り込むなど、ROIC へのコミットメントを強めている企業もあり、稼ぐ力を最大化するための鍵として重要視されてきているのがうかがえます。 ROIC は幾つかの要素 (KPI) に分解されますが [*]、本稿ではその中でも、CFO メッセージでよく目にする、資本の回転率の指標である「CCC (Cash Conversion Cycle: キャッシュ・コンバージョン・サイクル)」に焦点を当てたいと思います。 CCC 改善の意義 CCC 管理の有名な例として、米国の Apple 社や Amazon 社の CCC がマイナス (理論上、仕入債務の支払いの前に売上を回収) で、その潤沢な運転資金を武器に、積極的な戦略投資を行ってきたことが、多くの書籍で取り上げられています。一方、日本企業は、欧米先進企業に比べて資本効率やキャッシュマネジメントへの意識が弱い、と指摘されてきましたが、最近の企業レポートからすると、それもだいぶ変わってきている印象を受けます。 では、CCC を管理、改善することの具体的な意義はどのようなものでしょうか。 1. 財務効率性の観点 まずは文字通り財務の効率性の向上です。仕入債務の支払いから売上の回収までの期間が長ければ、その分、手元の資金を運転資金として多く確保する必要があります。好業績下においても生産、仕入が拡大していく過程で必要な運転資金は増大していきます。運転資金は、企業の存続において第一優先である一方、いわゆる「つなぎ」のお金であり、外部から追加で調達した場合、それは純粋に利子費用の増加となり、それそのものは新たな収益を生みません。 したがって、CCC を改善し、必要手元資金を最小限にすることで、有利子負債を圧縮したり、余剰としてうまれたキャッシュを次の投資の原資として利用できるようにしたりすることは、持てる資産を最大限利用するためにとても重要です。 2. 不正防止、会計処理上のエラー検知の観点 一方で、CCC を定期的にモニタリングすることで、不正や重要な会計処理のエラーを発見するという役割も期待できると考えられます。不正の多くは最終的にはキャッシュの動きに現れますが、その前段階である棚卸資産(在庫)や売掛金、買掛金の動きでも気づく可能性があります。単に CCC が短縮できればよい、というものではありません。特に在庫は不正が起きやすいポイントと言われます。 たとえば、期末に在庫の押し込み販売をした、またはバイセル取引の未、実現利益の消去が漏れた、などのイレギュラーな動きがあれば、CCC の数字に影響を与えます。定期的に CCC の変動要因の説明を求められる体制になっていれば、こういった不正行為の抑制、または会計処理エラーの早期発見につながると考えられます。...続きを読む
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経理と財務、似て非なるもの経理と財務の違いについて、これまでも多くの方がネット上などでコメントされていますが、キリバ・ジャパンに新たに入社した営業向けのワークショップのアジェンダのひとつとしても本テーマがあり、そのコンテンツの作成を依頼されて自分なりに考えてみましたので、ここでご紹介したいと思います。 ■扱っているものが違います どちらもおカネに関する業務のように思われていますが、誤解を恐れずに言うなら 経理は事業活動(モノやサービスや人の流れ、活動)をおカネ(貨幣価値)に換算した数字(帳簿)を扱う仕事。 財務は事業活動に伴って必要になったり不足したりするおカネ(キャッシュ)を扱う仕事。 そう、経理は実はおカネ(キャッシュ)を扱っていません。 実際には出納業務で現預金を扱う経理部門の方もいらっしゃいますが、これは経理と財務の業務の違いというより、組織上の役割分担の話(財務と経理が組織として分かれていなかったり、財務部門は本社のみで地方拠点の出納業務は現地の総務や経理の名称を持った部署が行っていたり等)なので、以降では経理業務=財務会計、管理会計という前提で「数字を扱う」という表現が意図することや、その他の具体的な違いについてコメントします。 ■仕事の内容の違い 経理と財務の仕事の内容をおさらいしてみます。 <経理の仕事> 財務会計(単体決算、債権債務管理、その他補助簿管理、連結決算) 管理会計(予算策定、業績分析、戦略策定支援) 制度設計(社内の会計ルール、業績評価プロセス、内部統制) 税務対応(税務申告、税務調査対応、社内教育) <財務の仕事> 資金管理(収支計画、資金調達/運用、資金予測) 財務リスク管理(流動性、為替、金利、カウンターパーティ、ソブリン、等) 業務メニューで言うとざっくりこんな感じだと思います。もう少し具体的に言うと、例えば、個人で輸入ビジネスをしているようなケースにおいて、 今月、どんな品をどれくらい輸入して、それぞれに利益を上乗せして、大体これくらい儲けようという計画を立て(予算策定) いざ実行してみたら、輸入した品も数量も価格も大体予定通りだったのに、手元に残ったおカネが予想よりも少なかった、というときに 仕入れの実績(数量、価格)と販売の実績(数量、価格)、輸入や顧客への配送、諸々の手続きにかかった費用を計算し、いくら儲かったのかを正確に計算し(決算:PL作成) 計画よりも儲けが少なくなった原因がどこにあったのか調べる(業績分析) 以上が経理の仕事の具体的例です。後にひかえる確定申告(税務申告)もそうですね。 そして、ビジネスを始めるにあたり、 今月の仕入れでいつ、いくらのおカネが必要で、販売での入金がいつ、いくらあるのかについて見込みを作成し(資金計画)、 おカネが不足することがないように、その動きや残高を日々ウォッチし(資金繰り管理) 輸入代金の支払い用の外貨をなるべく条件のよいレートで準備する(資金調達、為替管理) これが財務の仕事の具体例になります。 ■ 数字の捉え方の違い 例えば、欧米や中国に子会社を持つ日本企業で連結財務諸表上の現預金残高が150億円というとき、経理の視点では連結決算の結果、算出された150億円という数字の正確性や妥当性(前年同期の残高や予算、見込みとの比較や著しい差があった場合の要因分析など)を調査、確認することが重要になります。 しかし、財務の視点では、財務諸表上は150億円という1つの数字ですが、円の他にもドルやユーロや元などの複数の通貨で、複数の口座(国、地域)に分散されて存在し、それぞれに為替リスクやローカルルール(当局の規制や銀行のルール)が存在するので、通貨別、場所別(国、地域、銀行、口座)の残高の情報が必須で、それが財務諸表というすでに過去のものとなった情報ではなく、今いくらあるのか、今後いくら出入りがありそうなのか、そして出入りがある時点(=将来)での為替レートをいくらと想定するか、などが重要になります。 ■ なので、経理は過去、財務は将来と言われます 繰り返しになりますが、経理は事業活動(モノやサービスや人の流れ、活動)を数値化し、会計基準や会社法などのルールに則って財務諸表などの成績表としてまとめ、社内外のステークホルダーに開示・報告し、説明することが最も重要な業務であり、したがって、経理が見ている数字は過去(最速でも今この瞬間まで)の事業活動の結果情報*と言えます。 一方、財務は事業活動に伴って発生したおカネをどう効率的に管理、運用するか、おカネそのものが持つ様々なリスクをどう最適化するか等の、今この瞬間のリアルな情報とこれから先の予測情報が重要視されます。 *経理のアウトプットにも業績予測やIFRSの包括利益など将来の事業活動を見るような部分もありますが、それは今期の事業活動の結果であるBSやPLをもとに将来情報を加味して作った数値であり、これまでの事業活動の結果数値(決算数値)の正確性と妥当性を追求し、社内外のステークホルダーに説明することがメインテーマであることに変わりはありません。 ■ まとめ -3つの違い- ①扱うものが違います 経理は数字(帳簿)を扱い、企業内の情報が中心。 財務はリアルなおカネ(キャッシュ)を扱い、社内だけでなく社外の情報も幅広く扱い、かつ重要視される。 ②見ているものが違います 経理は数字を通して事業の遂行状況と事業運営に関わるリスクを見ている。 財務はリアルなおカネとおカネに関わるリスクを見ている。 ③見ている時間が違います 経理は過去と今の数字を年度、半期、四半期、月のサイクル*で見ている。 財務はリアルなおカネの今とこれからを見て日次やリアルタイム**に見ている。 *これは主に財務会計の話で管理会計においては事業内容や指標に応じて日次や週次といった様々なサイクルがあります **望ましいサイクルはこちらですが、グループ全体の状況の把握は月次にならざるを得ない企業も現実には少なくありません ■ 最後に - 経理に有効な ERP、財務に適した TMS...続きを読む
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資金効率化にどう取り組むか? — キャッシュマネジメントにおいて日本企業が陥りがちな過ちグループの資金効率化 多くの日本企業で、グループの資金効率化において「キャッシュマネジメント = キャッシュプーリング」という認識があると思われます。そして、日本企業が多く進出しているアジアでは各国の外為規制等によりクロスボーダーで資金集中を行うことに極めて制約が多く、アジアではキャッシュマネジメントは事実上できない、だから取り組む必要性もない、という認識が多いという声も聞きます。 もちろん、アジアでは欧米のように制約なくキャッシュプーリングをすることはまだまだ難しいですが、相応のスケールメリットがあるのであれば、シンガポール、香港などの制約のない国に対象を限定して、クロスボーダーでの資金集中を行うことは可能です。また、制約がある国であってもその国内に複数の子会社があるのであれば、その国内でキャッシュプーリングに取り組むことも可能です。クロスボーダーでグループ内流動性の最適化を図りたいのであれば、グループ会社間の決済条件を調整(前倒しまたは後倒し)したり、リインボイスセンターを立ち上げて、グループ会社間の資金フローを一元管理することなどにより、キャッシュプーリングと類似の効果を得ることができます。 資金効率化の優先課題 ただ、アジアも含めてグループの資金効率化に取り組むに当たっては、キャッシュプーリングよりも、もっと基本的な課題に優先順位高く取り組むべきです。それは、「口座の残高・入出金情報などの機動的把握と管理」です。 これは非常に基本的なことではありますが、仮に本社では出来ていても、各国子会社は十分に取り組めていないことが多いです。 海外進出、買収、合併等により子会社数・取引数が増える中でいつの間にか銀行口座の数が増え、グループ合計で何百もの口座を保有している会社もあります。 つい最近のお客様との面談では、千を超える口座数の会社もあり、非常に驚きました。特に、複数の地場銀行と取引があったりすると、合計残高の把握という単純な合算作業すら手間取りがちになり、作業の結果導き出された合計残高の正確性もスプレッドシートによる手作業で行っているため担保されていません。私が日頃、お客様と接していて、グループの銀行口座の整理には多くの企業が、本社がイニシアチブをとって取り組めていないように感じられます。子会社が多いからといって、そんなにも沢山の口座が必要でしょうか?何に使っているのでしょうか?おそらく必要かどうかも含めて、全ては子会社任せになっていて本社は把握できていない、そして子会社も昔から保有しているからそのままにしている、整理することへのインセンティブもないので整理していない、という状況かと思います。 口座が多いことの何が問題なのか? 口座が多いことの何が問題なのか?色々な問題が考えられます。例えば、入金・出金取引が細かく複数の口座に分かれていることで、各口座に決済用のバッファー資金を確保しないといけなかったり、口座間の資金移動の手間も大きかったりします。また、口座維持手数料が発生するような場合は、手数料回避だけの目的で残高を維持しないといけない。そのような状況がチリも詰もれば山となり、結構なボリュームで資金滞留となります。 このような状況でキャッシュプーリングを導入しても効果は限定的です。多くのキャッシュプーリングは、プーリング提供銀行の口座に各子会社が自発的に他銀行口座からマニュアルで余剰資金を移動させる形で運営されます。口座が多いことは、子会社の資金移動作業の負担になり、プーリング口座への資金移動には消極的になります。一部の外資系銀行等では、マルチバンクのキャッシュプーリングを仕組みとしては提供可能としてはいますが、実際にはキャッシュを吸い上げられる側の取引銀行が難色を示してしまい、そのような仕組みが実現しないこともあります。また、口座が多いことは子会社自身においてもその資金繰りが見えにくくなってしまい、プーリング口座に移動出来る余剰資金額の把握が完全ではありません。余剰資金が十分にプーリング口座に移動されないキャッシュプーリングでは、グループの資金効率化の効果は出ません。したがって、繰り返しになりますが、このような状況でキャッシュプーリングを導入しても効果は限定的です。 キャッシュプーリングの効果を最大限引き出すためにも、グループで保有している口座を整理することが、まずは取り組むべき資金効率化施策だと考えます。一方で、グループで保有している口座がどれくらいあるのか詳細を把握出来ていない日本企業は多いです。数としては把握していても、どの子会社がどの銀行に何の目的で保有していて、その利用状況まで詳細に常に把握しているケースは少ないと感じられます。 銀行口座情報の可視化 キリバは、資金効率化のファーストステップとして銀行口座情報の可視化を多くのお客様に提案しています。銀行口座情報の可視化に取り組むことは、単にグループのキャッシュポジションについてトレジャリーマネジメントシステム (TMS) を通して、タイムリーに把握できるという意義にとどまらず、TMS導入による可視化に取り組むことで、本社がグループの保有口座を棚卸しにも取り組める絶好の機会となり、結果的に、不要な口座を削減すること自体が資金効率化にも繋がりますので、TMS導入による銀行口座接続と合わせて口座の整理に取り組むことが効果最大化の重要なポイントです。 また、可視化への取り組みを検討される際に、現状では口座数が多く銀行からSWIFT等で口座情報を送信してもらう銀行接続手数料が高く、プロジェクトの入り口で予算が取れないという声を聞きます。これについても、一旦は口座数が多い状況で全ての銀行口座を接続し、接続後にTMSで可視化して各口座の入出金の状況をモニタリングします。それにより本社はどの口座が必要か不要かについて、子会社のロジックではなく、データをもとに子会社に口座閉鎖を指示することでき、銀行接続手数料の削減に繋がります。 キャッシュを絞り出す 多くの日本企業のキャッシュマネジメント体制は未だ「びしょ濡れのぞうきん」という状態だと思います。まずは可視化と合わせてグループの銀行口座の整理という基本的な課題に対応するだけでも、キャッシュを絞り出せることが多いです。その上で次のステップでは、改善された資金・流動性ポジションをベースにキャッシュプーリング導入による資金集中に取り組むのが、真の資金効率化に向けたあるべき流れだと考えます。続きを読む
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ERP・銀行間のクラウドインテグレーションの複雑性今後 5 年ほどの間に、企業の情報システムの領域において地殻変動が起きます。この先 10 年以内には大部分の企業がクラウド上で ERP を運用しているでしょう。ERP ベンダーと SIer (システムインテグレーター) は、この大規模なプロジェクトからの利潤を追求、長年に渡る移行プロジェクトから得られる利益を享受する態勢を整えており、収益の急増は確実と言えるでしょう。移行プロジェクトの多くはグローバルな性格のもので、複雑なグローバルでの銀行間のインテグレーションへの対応が求められます。 私たちが ERP のクラウド移行プロジェクトを支援し、既に移行プロセスに入った企業からは、繰り返し同じことを耳にします。「こんなに複雑で、時間を費やすことになるとは思ってもいなかったよ。」と。実際のところ、Kyriba が協働する多くの SIer からは一貫して、銀行間のインテグレーションはプロジェクトで最もハイリスクなコンポーネントのひとつであるという話を聞きます。 世界各国の銀行とのインテグレーションの複雑性 プロジェクトの複雑性の理由は、銀行間のインターフェースの開発とは限らず、銀行のタイムラインに翻弄されてしまうことも一因です。現在の企業の IT 部門は、バックオフィスシステム間のインターフェース構築の経験は豊富ですが、これらは基本的に固定的なインターフェースであり、新たなリソースは必要ありません。銀行間のインターフェースに取り組む場合、IT 部門は一般的に、銀行と調整を行うため多くのリソースを必要とします。これには IT、トレジャリー、債務担当 (AP)、コネクティビティの各部門や SWIFT Service Bureau に加え、銀行の IT 部門も含まれます。仕様を策定しても、それが最初のテストを通過することは滅多になく、開発チームが再構築と再テストを行い、もう一度調整作業をこなさねばなりません。銀行からテストフォーマットの承認を得るのに、2 ~ 5 倍の労力が必要になる例も目にしてきました。 銀行がフォーマットを承認したら、IT 部門は、開発 > テスト > 品質保証 (QA) > 非本稼働環境 > 本稼働環境を含む本番リリースに向けた社内手続きを進めねばなりません。実際、1 種類の支払フォーマットを開発、テスト、リリースし、業務担当者が本場環境で使用できるまでに 6 カ月以上かかることも珍しくありません。 SWIFT 接続にかかる労力 よく目にする誤解は、SWIFT は全ての銀行が使用する標準的なメッセージタイプだという思い込みです。確かに SWIFT は MT から...続きを読む
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拡大するグローバル・トレジャリー業務に適したテクノロジーを探して国際市場に参入する際、最も重要になるのは、自動化を取り入れつつ複雑なグローバルビジネスを支えるために設計された、トレジャリー・マネジメント・システム(TMS)と成長計画です。 TMS は、企業のグローバル展開に対応して、迅速に進化させることができます。グローバル財務業務の強化を通じて、 銀行接続 の簡素化、支払セキュリティの向上、非価値業務の削減、導入費用の低減、最適な企業の長期体制を実現します。 なぜ TMS を導入するのか ? トレジャリー・マネジメント・システム(TMS) は、資金の可視化、バンキング要件の管理、為替管理、リスク軽減など、事業のさまざまな分野で役立ちさます。 TMS を導入すれば、スプレッドシートへの過度の依存を減らし、データを正確かつリアルタイムに管理できます。さらに、以下のようなメリットがあります。続きを読む
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成功する資金予測の作成The number one treasury issue that causes CFOs the most potential concern is unreliable cash visibility and forecasts, according to a Nov. 2018 CFO Publishing survey, “3 Key Areas Where CFOs Say Treasurers Need to be More Strategic”. Whilst every organisation talks about forecasting more effectively, but few allocate sufficient people, time, and technology to build an effective programme. In our latest blog, we discuss what cash forecasting is and why it's so important to todays CFOs and treasurers.続きを読む
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M&A における財務領域の PMI (ポスト・マージャー・インテグレーション) でやるべきこと海外 M&A において CFO に期待される行動と役割 調査では 2018 年度の日本企業の M&A は取引件数 / 総額とも、過去 10 年間で最高で、M&A は日本企業の事業戦略の一選択肢として定着している中、経産省は、「海外 M&A を経営に活用する 9 つの行動 (2018 年 3 月同省発表)」の「別冊編 (2019 年 6 月発表)」の中で海外 M&A において CFO に期待される行動と役割を明確化しています。 「別冊編」では、CFO に期待される 9 つの行動の内の 1 つに「『買収して終わり』になっていないか」がありました。要は PMI ~ Post-M&A への取り組みです。 具体的には、「CFO の責務は、M&A の成立ではなく、その後の統合作業を通して、企業価値の向上を実現すること。M&A の目的達成のため、買収後の子会社の状況を迅速・正確に把握できるようにすべき。グローバル規模でのグループガバナンスの整備の一環であることも意識しつつ、そのためのインフラ整備も惜しむことなく行う。」とありました。 当然、これは CFO 傘下の財務部門にも同様に求められることだと思いますので、本日は、M&A における財務 PMI について考えてみたいと思います。 財務の PMI (ポスト・マージャー・インテグレーション) M&A...続きを読む
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TMS と RPA の連携による財務業務高度化のベストプラクティスこれまで財務業務はエクセルとマニュアルオペレーションが頼りでしたが、近年クラウド型のトレジャリー・マネジメント・システム(TMS)が市民権を得つつあります。その TMS を上回るペースで利用が進んでいるのがロボティクス・プロセス・オートメーション(RPA)です。マニュアルオペーションをシステム化・自動化するという点でTMSとRPAの役割は重なっていますが、RPAはそのわかりやすさから支持を得ています。ではRPAがあればTMSは不要なのでしょうか? もちろんそうではありません。両者はそれぞれ利点と欠点があり、補完関係にあります。導入効果を最大化する上では、両者の違いを正しく理解することが極めて重要です。 本記事では、TMSとRPAの連携による財務業務高度化のベストプラクティスを紹介します。 1. TMSとRPAの概要 TMSは財務業務に特化したソリューションであり、資金効率の最大化、生産性の向上、ガバナンスの強化を実現します。TMS導入後は、TMSを中心として財務業務が実行されるようになります。従って、多かれ少なかれ業務プロセスの変更を伴います RPAは業務横断的に利用できる、自動化のためのソリューションです。レポートの作成など、マニュアルで実施しているほとんど全ての作業を自動化することが可能です。また、あくまでも現在のマニュアル作業の置き換えであるため、業務プロセスを変更する必要はありません。 この比較だけ見ると、RPAの方が導入のハードルも低く、TMSを導入する必要がないように思えるかもしれません。でも、それは事実ではありません。 2. RPAの限界 RPAには決定的な制約があります。それはRPAの最大のメリットである「業務プロセスを変更せずに済む」という点にあります。業務プロセスを変更せずに済むことは、導入のハードルを下げる一方で、導入の効果を限定する要因となります。 例えば、伊予銀行では、RPAによる既存プロセスを前提とした自動化ではなく、業務をゼロベースで組み立てる方法を選択したそうです。その理由は、RPAによる効率化効果が10〜20%に留まるのに対して、ゼロベースでの組み立てでは70%〜90%に達すると試算したことにあります。 参考 : 伊予銀行が、RPAではなく業務を再構築してチャットボットを導入したわけ では、TMSはどうでしょうか。TMSの導入は、確かに変化の痛みを伴う場合がありますが、その分大きな効果を得ることができます。また、RPAのデメリットとして指摘される、業務のブラックボックス化、野良ボットによるガバナンスの低下や変化への対応能力の低下といった問題もありません。 一方、TMSは柔軟性という意味では制約があります。これまでエクセルの機能を駆使してマニュアルで作成していた複雑レポートをTMSの標準機能で出力することは多くの場合不可能です。 3. TMS + RPA=財務業務の高度化 つまり、最適解は両者の組み合わせにあります。それもTMSを主として、RPAを補完的に使うことがベストです。具体的には、次のようなユースケースが考えられます。 銀行明細データはTMSで取得し、RPAでレポートの加工を行う TMSで自動取得できない口座(国内外貨口座など)のみをRPAで取得し、TMSにアップロードする 為替取引の管理はTMSで行うが、社内為替レートのTMSへのアップロードをRPAで行う 一方でこのアプローチには1つ問題があります。それはRPAの適用範囲が限定されるため、費用対効果が成立しづらくなることです。では、どのように検討をすれば良いでしょうか。 4. RPA導入の実験台に名乗りを挙げる お勧めはRPA導入の実験台に財務部門として名乗りを挙げることです。 多くの会社においてRPA導入は、IT部門が主体となり、全社的な取り組みとして企画されます。つまり、費用対効果は全社的に計算されます。それにより、財務領域単体では成立しない費用対効果が成立するようになります。 実際、弊社のお客様の中には、そのようなアプローチでRPAを導入し、TMSを補完して、より大きな財務高度化を実現しています。 5. まとめ 時間管理のコツを示すアナロジーに「バケツに石を入れる」アナロジーがあります。まず大きな石を詰め、その後に小さい石や砂を詰めることで、バケツに入る量を最大化できるという内容です。つまり入れる順番が重要です。 TMSとRPAの関係においては、TMSが大きな石で、RPAが小さな石に対応します。まずTMS導入による業務プロセスの変更も含めた大きな改善を図り、それでも残ってしまうギャップをRPAで埋める。これこそが財務業務の導入効果を最大化するためのベストプラクティスです。 エクセル頼りだった時代と異なり、現在はTMSとRPAという強力な武器が存在します。是非、TMSとRPAの組み合わせによる財務業務の高度化についてご検討ください。 (作成) 2018/11/29続きを読む
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直接法キャッシュ・フロー計算書1. なぜ TMS (財務管理システム) によるキャッシュ・フロー計算書なのか? 企業の経営成績を把握するためには、もとより損益計算書がありました。しかしながら、これは発生主義に基づいて作成されるものであり、利益と現金の動きは一致せず、これだけでは黒字倒産が起きかねません。そこでキャッシュ・フロー計算書で現金の動きを把握する必要があります。日本では、2000年3月期*から株式を公開している企業にキャッシュ・フロー計算書の作成・開示が義務付けられました。 * 1989年3月期から1999年3月期までは個別の資金収支表が開示されていました。 キャッシュ・フロー計算書は、財務報告の一環として、株主・投資家や債権者その他の関係者に対して、キャッシュ・フローを生み出す能力、流動性、債務の返済能力や配当の支払能力、資金フローの情報を報告し、評価してもらうものです。 そして、「キャッシュ・フロー経営」という用語も生まれました。損益計算書上の利益の追求はもちろんですが、“どれだけのキャッシュを稼ぎ出し、フリー・キャッシュ・フローをどれだけ増やすか”を重視する経営です。最近では不正会計を起こした東芝が、「当期利益至上主義を脱却し」、「キャッシュフローに重点を置いた業績評価」に移行すると宣言しました*。 * 東芝 (2015年9月7日) 『過年度決算の修正、2014年度決算の概要及び第176期有価証券報告書の提出並びに再発防止策の骨子等についてのお知らせ 別紙 再発防止策の骨子について』。 また三菱商事は、収益性の高い資産への入れ替えを促進するために、部門別のフリー・キャッシュ・フローを算出し、部門別の現金収支の管理を徹底していくとしています*。 *「三菱商、現金収支の管理徹底 全部門、3カ年で黒字に」『日本経済新聞』2016年6月23日、朝刊。 キャッシュ・フロー計算書の目的のひとつに、将来キャッシュ・フローの予測があります。企業価値は将来キャッシュ・フローの現在価値のことですから、企業価値を高めるには、将来キャッシュ・フローを適切に予測して、必要な手立てを講じなければなりません。個別事業の継続判断をする場合でも、その事業の将来キャッシュ・フローを予測することが出発点となります。 キャッシュ・フロー計算書には、その作成方法から直接法によるものと間接法によるものと2種類あり、学術の場では、直接法の方が将来キャッシュ・フローの予測の点において有用であることが実証され、会計基準を策定する場では直接法が推奨されてきましたが、実務の立場から間接法のキャッシュ・フロー計算書が作られてきました。 クラウドのTMS(財務管理システム)によって直接法のキャッシュ・フロー計算書を銀行取引明細を元に作成できるようになり、タイムリーにいつでも最新の状態を確認できるようになりました。これによって、「そもそも事業から資金を正しく回収できているのか、なぜ回収できず資金が流出していくのか、どうすれば手元の資金を厚くし、さらに事業に投下していけるのか」といった将来キャッシュ・フローの予測が様々な切り口でできるようになります。また足元の事業管理の面でも、「営業による売上の入金がいくらあって、支出がいくらで、今月の着地見込みと来月の見通しはどのようになるか」などを、決算による利益確定を待たずいつでもレビューできて、必要なアクションを後手に回ることなく取っていくことができるようになります。 このような視点から、経営を考えるために欠かせない戦略的なツールとして直接法のキャッシュ・フロー計算書が位置づけられると考えます。 2 直接法のキャッシュ・フロー計算書 2.1. 直接法と間接法 キャッシュ・フロー計算書には、直接法によるものと間接法によるものとがあります。作成方法が違い、その結果、表示方法も違っています。 項目直接法間接法作成方法入金の総額から、出金である原価や費用を控除してキャッシュ・フロー計算書を作成する方法貸借対照表や損益計算書からキャッシュ・フロー計算書を作成する方法表示方法資金の収入支出の総額を表示します。営業収入,原材料又は商品仕入のための支出等,主要な取引ごとに収入総額と支出総額が表示されます。税金等調整前当期純利益に必要な調整項目を加減して表示する方法です。純利益から出発するため、純額で表示されます。伝える情報営業活動によるキャッシュ・フローの源泉と使途が明らかになり、収入と収益及び支出と費用の相互間の関係が明確に示されます。発生主義に基づく利益と、現金主義によるキャッシュ・フローの関係が明示されます。付加価値貸借対照表や損益計算書にはない、キャッシュ・フローの総額情報を提供します。直接法のキャッシュ・フロー計算書は、社外の第三者には作成できません。新たな会計情報は提供しません。間接法のキャッシュ・フロー計算書は、貸借対照表と損益計算書から作成されるため、社外の第三者でも作成できます。 直接法と間接法、それぞれのキャッシュ・フロー計算書は以下のように表示されます。両者を比べると、営業活動によるキャッシュ・フローが異なり、投資活動と財務活動のキャッシュ・フローは同じです。 *1 他には、特別退職金の支払額、役員退職慰労金の支払額、災害損失の支払額、補助金の受取額、補償金の受取額、保険金の受取額、賃貸料の受取額、移転費用の支払額、などの記載事例があります。 *2 他には、無形固定資産の取得による支出(売却による収入)、定期預金の預入による支出(払戻による収入)、敷金及び保証金の差入による支出(回収による収入)、短期貸付けによる支出、短期貸付金の回収による収入、長期貸付けによる支出、長期貸付金の回収による収入、などの記載事例があります。 *3 他には、社債の償還による支出、株式の発行による収入、などの記載事例があります。 *4 この調整項目も会社によりますが、20項目前後の調整項目があります(次項参照)。 2.2. 直接法のキャッシュ・フロー計算書の長所と短所 (1)直接法のメリット 直説法のメリットは概ね以下に集約されます。*1 ①付加価値性: 営業活動による収入と支出が総額で把握でき、貸借対照表と損益計算書からは得られない情報が提供されます。 ②将来キャッシュ・フローの予測性: 営業活動によるキャッシュ・フローが、いかなる源泉から受領され、またいかなる目的で支出されたかが具体的に明らかになり、将来キャッシュ・フローを予測する場合に有用です。 ③合目的性: キャッシュ・イン・フローとキャッシュ・アウト・フローを示すという点で、「一会計期間におけるキャッシュ・フローの状況を報告する」というキャッシュ・フロー計算書の作成目的と整合しています。 ④一貫性: 直接法を採用した場合、投資活動および財務活動の区分と同一表示方法となり、一貫性がでてきます。 ⑤明瞭性: キャッシュ・フロー計算書の目的は、資金の出入りの内訳を明らかにすることです。間接法のように非資金費用である減価償却費や連結調整勘定償却額などが資金の源泉であるかのような誤解を与えることなく、キャッシュの動きを適切に表示します。この点は、IASBの表現を借りると、「損益計算書において公正価値の利用が多くなって、損益計算書とキャッシュ・フロー計算書の関係を理解することがむずかしくなってきた」*2ということになります。 *1 「キャッシュ・フロー会計情報と企業価値評価―九州地区の中小企業をめぐる実証分析」 税務経理協会 岡部勝成 2010/03 45ページ。直接法と間接法のキャッシュ・フロー計算書の有用性にかかる書籍や論文を渉猟した限りでは、この文献に長所がもっとも網羅的かつ明瞭に書かれているようでしたのでここに引用させていただきました。 *2 IASB(国際会計基準審議会)が2001年10月に審議し、直接法だけを認めました(原則10「キャッシュ・フロー計算書」)。IASBは、直接法だけを認め、間接法を認めない理由を3点あげており、これはそのうちの1点です。要するに当期純利益に対する調整項目が増えてきて、当期純利益と営業活動によるキャッシュ・フローの差額を理解することが難しくなったということです。ある研究で実際に調査すると、当期純利益に対する調整項目は1社平均16.6項目もあり、そのうち2社は24項目もあったそうです。しかもこの調整項目は分類されておらず、配列の順序も一様ではないため、非常にわかりにくくなっているとされます。(鎌田信夫 (2002年) 「業績報告書としてのキャッシュ・フロー計算書–IASB原則書案に関連して」 『産業経済研究所紀要』 第12号 86ページ。) (2)直接法のデメリット 直説法のデメリットは、概ね以下に集約されます(前掲書)。 ①基データの問題: 主要な取引ごとにキャッシュ・フローに関する基礎データが必要であり、作成には実務上手間がかかります。 ②ITコスト: 現金および現金同等物に関連する別体系の勘定システムを用意しなければならず、相当の情報作成コストが生じるというものです。 すなわち直説法は、従来の仕組みでは作成負荷が高いという点が難点です。 そこで直接法のキャッシュ・フロー計算書の作成方法としては、会計仕訳より作成する方法が検討、紹介されています。 3. 直接法による作成が今まで難しかった理由 将来キャッシュ・フローを予測する点では直接法の方がよいとされながらも、前項のデメリットにより、直接法を作成している企業はほとんどいません。 東証と名証のそれぞれ第一部と第二部に過去11年間継続して上場していて連結財務諸表を作成している企業1,765社中、直接法を採用している企業は1社もありません。* * 日本政策投資銀行設備投資研究所編 (2015年) 『産業別財務データハンドブック 2015』 日本経済研究所。また、その他の市場まで含めても、直接法を採用する上場会社は10社程度にすぎないそうです。(桜井久勝 (2015年) 『財務諸表分析〔第6版〕』 中央経済社、100ページ)。...続きを読む
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トレジャリーの見える化「見える化」という用語 「見える化」とは 財務体質改善・最適化のための見える化 財務コスト削減のための見える化 リスク管理のための見える化 見える化を進めるうえでのポイント 「見える化」という用語は、日常のビジネスの現場で頻繁に使われています。しかしながら、しばしば「見える化」が目的と化したり、見ていたはずのところで大問題が発覚したりします。また子会社の買収や担当の異動などにより、新しい管理対象ができた時に、どこから何を見ていったらよいのかアイデアが浮かばない時もあります。 そこで本項では、そもそも「見る」とは何のために何を見ることかをおさらいした上で、トレジャリーの何を見るかについての主なポイントを説明します。 1. 「見える化」という用語 「見える化」という言葉は、製造業の現場で古くから使われていた用語で、代表的な例はトヨタの「あんどん」や「カンバン」です。一般のビジネスの現場で「見える化」という用語が広く使われるようになったのは管見では、遠藤功氏の著書、 『見える化 : 強い企業をつくる「見える」仕組み』 (東洋経済新報社、2005年)が大きなきっかけになりました。 2. 「見える化」とは 2.1. 何のために「見る」のか 何のために「見る」のでしょうか?それはとりもなおさず、 問題を発見するために、見る ということです。トヨタでは、2005 年に社長に就任した渡辺捷昭氏は、就任時のインタビューで次のように語っています。 「成長している時は問題点が潜在化して見えなくなる。開発や調達、生産、販売など各部門が抱えている兆候を『見える化』し、何が足りず何を補強すべきなのか明確にする。」 (出典:「渡辺トヨタ社長に聞く 現状維持は衰退と同じ」日本経済新聞、2005年7月2日付朝刊) すなわち、見た時に特に問題がなかったということがあればそれは、見方が悪いということかもしれません。 2.2. 「見える化」の本質とは (1) 「視覚」の重要性 遠藤氏の著作が「見える化」の本質について整理していますので、以下同書に拠りながら、「そもそも『見える化』とはどういうことか?」について振り返ることにします。遠藤氏は、「『見える化』ではなく『見る化』になっていないか?」と指摘して、次のように書いています。 「人間の行動を誘引するために何より重要なのは、実態や問題を包み隠さず、タイムリーに『見える』ようにすることだと言えるはずだ。人間が本来持っている責任感や能動性、やる気を信じて、企業活動上のあらゆる問題や事象を顕在化させ、『視覚』に訴えていくことこそが、『見える化』の本質なのである。」 (同書 p.21, 26) データのダッシュボードを設計する際には、グラフを張り付けて終わりではなく、毎日直感的に状況や問題を把握できるように十分に工夫して初めて「見える化」をしたと言えそうです。 (2) 「見える化」できていると思っていて、見えていないパターン 遠藤氏によれば、「見える化」できていると思っている企業で実は“見えていない”ということは珍しくなく、それは次の4つのパターンがあります(同書 p.26)。トレジャリーマネジメントシステム(TMS)を使えば、この落とし穴をすべて克服できます。とはいえTMSはツールにすぎませんので、トレジャリーの見える化を構築した後で、この落とし穴に陥っていないか定期的にレビューすることが大切と思われます。 実は「見えていない」パターン TMS を使えば、 「悪い情報」が見えていない 「嘘をつかないキャッシュ」という言葉に表されるように、事業の良し悪しを物語るキャッシュの見える化を実現できる 「組織」として見えていない 本社が新興国まで含めて全世界を見ることができ、データをダッシュボードにすることによって、グループ全体でCFOから子会社の担当者まで共有できる タイムリーに見えていない 毎日銀行からデータを取得することにより、翌日にはすべての銀行取引が見える 伝聞情報しか見えていない 銀行や ERP から明細データを直接取得することにより、担当者の主観や恣意が入る余地がない 遠藤氏はさらに以下のように語っています。 「『見えている』と思い込むのではなく、『見えていない』『まだまだ見えない』と考えること-そこから「見える化」はスタートする」、...続きを読む
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ROE (Return On Equity、自己資本純利益率)1. ROEとは ROE(Return On Equity、自己資本純利益率)は、自己資本に対して、どれだけのリターンがあったのかを示す指標で、当期純利益を自己資本で割った比率で表されます。 ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本 [*] * 分母の Equity は、日本では「自己資本」「株主資本」「純資産」の3つがあります(2005年12月の新会計基準と2006年5月施行の新会社法により、「株主資本=自己資本=純資産」ではなくなっています)。“当期純利益”が株主以外のステークホルダーに支払った後の残余利益、すなわち親会社の既存株主に最終的に帰属する当期の利益額であることから、分母は純資産のうち、親会社の既存株主に帰属する部分である自己資本を用います。また、評価・換算差額等は、払込資本ではなく未実現の損益で未だ当期純利益に含められていないことから、より厳密に株主にとってのリターンを見たいときは、分母を株主資本とすることもあります。 ROE の分解式としては、デュポン式が知られています。 ROE = 売上高純利益率 × 売上高総資産回転率 × 財務レバレッジ 言い換えれば、 純利益 = 純利益 × 売上高 × 総資産 自己資本 売上高 総資産 自己資本 と分解されます。 すなわち、ROEを伸ばすとは、財務のレバレッジを適切に効かせながら(負債を有効に活用しながら)、効率よく資産を回転させ、利益率を高めていくことに他なりません。 2. 日本企業の ROE続きを読む
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RPA による財務管理業務の手作業の自動化財務管理の分野でもRPAという単語が聞かれるようになってきました。コンサルティング会社等も財務部門へRPAの提案を始めています。ITの用語ですが、今までシステム化されていなかった作業が自動化でき、ホワイトカラーの生産性が著しく向上すると注目を浴び、実績も出てきている技術です。 グローバル財務管理業務でこの技術を適用すると単純作業がなくなり、財務に係る意思決定により注力できるようになります。しかし、財務管理業務の中にはRPAによる自動化について注意が必要なものもあります。 1. RPAとは 定義 RPAとは、ロボティック・プロセス・オートメーション(Robotic Process Automation)の略です。「RPAとは、これまで人間のみが対応可能だと理解されていた作業を代行する、またこれより高度な作業を遂行するソフトウェア」です [※1]。「RPA」にはロボティックという単語が入っていて、仮想知的労働者(Digital Labor)と呼ばれることもありますが、工場にあるような物理的なロボットではありません。ルールエンジンや認知技術等を活用したソフトウェア(群)です。 RPAとは要するに、作業マクロです。多くの人が連想する「マクロ」とは、そのアプリケーションの中で動作し、そのアプリケーションの中の作業を自動化するものではないでしょうか。しかしRPAは、アプリケーションを超えて作業を自動化できます。 ではなぜ「マクロ」ではなく「ロボット」という表現を使っているかと言えば、 人間が行っている作業をそのまま、何も変えずに代行できること 例えば、人間が1時間かかる仕事をRPAは10秒で行い、しかもミスはゼロであったりするように、人間よりも圧倒的にパフォーマンスがよいこと からロボットという表現が使われているそうです。 [※2] アプリケーションをまたがるマクロや自動化ツールはこれまでにも実はありました。したがって、RPA自体は技術的には目新しいものではありません。最近RPAという名前で注目されはじめたのは、さまざまなツールが出てくるなど環境が整った結果、これまでシステム化されてこなかった事務作業に適用しやすくなり、効率化できる可能性が飛躍的に広がったためです。 また、プログラミングの必要がなく、既存の業務とシステムはそのままでよいというRPAの特長も、RPAを後押ししているといえるかもしれません。 ツール ツールにも単機能安価なものから、高機能高価なものまで揃っており、高機能なツールであれば、調べて判断しその結果を返したり、学習したりできるようになりました。 ツールには、パソコンソフトレベルの価格で購入できるものから、年間1,000万円程度かかるものなど幅広く揃っているようです。機能についても、バッチ処理が得意なロボット、対話が得意なロボット等、特定の機能に特化したツールも豊富なようです。価格には、機能面以外にも安定性、操作性、拡張性などの違いが現れます。 RPAの3段階~RPAが実行できること RPAができることは、ルール化できる業務を自動化するレベルから始まり、人工知能の領域まで達します。具体的には、以下のように3段階に分かれます [※3] 。 なお、RPAの定義も一様ではないようで、上図の第1段階のみをRPAととらえ、第2段階と第3段階の非定型データの処理や学習を行うことはRPAには含めない場合もあるようです。ここでは日本RPA協会の定義に従っています。 ロボットの種類 現在、企業で実際に稼働しているロボットには以下のようなものがあります。単純事務処理を肩代わりするものから、担当者に判断材料を提供するところまで、業種を問わず、多くの実績が生まれています。 2. 適用可能業務とアプローチ RPAの3つの段階のうち、現在の主流は第1段階で、それでも大きな効果が生まれています [※4]。 第1段階のRPAは、たとえば以下のようなことは一般的に行うことができます。 紙の証憑をスキャンして情報を読み取る システムやサービスにログインして、必要なデータを検索して結果をスプレッドシート等に張り付ける 入力データをシステムやサービスのデータと照合して、ルールの下にOKかNG等の判断を行ったり、演算したりして、その結果をファイルに書き出す したがって、次のような業務がRPAの活用が向いていると言えます [※5]。 エクセル等のEUCをする業務 社外のシステムを利用している業務 複数のシステムを利用している業務 RPAはプログラミングを行わず、操作を記録または設定することで実装されますので、低コスト、短期間でできることが特長です。そこで、①ルール化しやすい業務、②業務量が多いもの、③頻度が高い業務からロボット化していくのがよいでしょう。そのような業務にRPAを適用できれば、効果をすぐに確認しやすく、社内の理解も得られてさらに進めやすくなると思われます。 ただし、この①、②、③の条件は早期に大きな効果を創出するために優先するという条件であって、RPAのプログラミング不要という特長を生かせば、次のような業務もまたロボット化する価値があるとされます。 ㋐システム化が起案されたものの、ROIが弱い等の理由により却下されたもの、投資効果の説明が難しかった業務 ㋑そもそも「あればうれしい機能」でシステム化が起案されなかったもの ㋒処理量が少なかったり、ルールや手順の変更が多かったり、そもそもシステム化は難しいだろうと思われていたもの このようにRPA向きとされる業務を箇条書きにしましたが、RPAの導入事例を見ると、“RPA向きの業務を抽出しよう”というボトムアップ的なアプローチもよりも、とりあえず手作業を全部洗いだして、実現性をRPAのベンダーやコンサルタントと一緒に検証して、できるものから順に全部ロボット化するという、トップダウン的なアプローチの方がRPAの効果を最大化できるかもしれません。 次項で紹介するオリックス社は、「さすがにここはITでは解決できない、代替できない作業と考えられてきた」、「『人手による対応しかできないと思われていた業務』と相性のよいのがロボット」と言っています [※6] ので、専門家に相談する方が早いのではないでしょうか。 留意点としては、RPAの場合、従来のシステム・ソリューションと違い、日常的にエラーやリトライが発生し、そこには人手を残しておく必要があることです。人が現在操作している世界をロボットに代行させるため、予期せぬ他人の操作やシステムの変更の影響を受けてロボットが処理できないことがしばしば起きます。たとえばロボットが操作するファイルのファイル名を、誰かが間違えて変えてしまっていたとか、ログインするシステムやサービスにおいて画面のレイアウト変更があったとか、そのような場合、ロボットはエラーとなり、人による対応が必要になるため、それに「慣れる」ことが必要であるとRPAの導入者は言っています [※7]。 3. 効果例 RPAについて説明している資料では、RPAによるコスト削減効果は40%から75%あるとか、作業時間が70%から90%削減されるとか、かなり大きな数字が紹介されています。実際の効果事例としては、公開されているもので以下のようなものがあります。...続きを読む
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マルチ ERP 接続海外展開を進める日本企業に欠かせないマルチ ERP 接続 マルチ ERP 接続の対象 マルチ ERP 接続の阻害要因 マルチ ERP 接続の方法 マルチ ERP 接続の副次効果 「マルチ ERP 接続」とは、トレジャリー・マネジメント・システム (以下、TMS) と企業グループ内各社の様々な ERP とを、現行の会計基準やコード体系、既存の ERP のインターフェイスを前提に接続することを指します。マルチ ERP 接続は、IT 面での課題に留まらず、実は子会社統制の観点で極めて重要なポイントです。 1. 海外展開を進める日本企業に欠かせないマルチ ERP 接続 日本経済新聞 [*] によれば、2014 年 6 月末までの1年間で大企業の利益剰余金 (内部留保) は 14.9 兆円増加し、同時に、長期保有の株式は 15.3 兆円増え、日本企業は海外を中心に M&A や子会社設立にアクセルを踏んでいるとあります。海外展開に伴う日本の直接投資の残高は過去 5 年で倍増していて、日本企業は儲けたカネの多くを海外に投資しているようです。 *: 2016 年 1 月 12 日付「M&A、国内投資と両輪に」 財務部門に求められることは、①矢継ぎ早の海外投資を実行するために資金繰りとグループ内での資金活用を適切に行い、次なる...続きを読む
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コーポレートファイナンスコーポレートファイナンスとは 企業価値とは 資金調達方法 配当政策 コーポレート・ファイナンスの大前提~「使える現金」はどこにいくら? 1. コーポレートファイナンスとは コーポレートファイナンスとは、日本語に訳すと、企業財務もしくは企業金融と訳されます。企業価値を最大にするために、市場から資金を調達し、事業に投資をして、調達元に資金を返済、還元していく活動の総称で、そのための理論や手法が体系化されています。狭義には、事業に必要な資金を金融機関や金融市場から調達することをコーポレート・ファイナンスと呼んでいる場合もあります。 ここでは、キャッシュマネジメントと対比して定義されている「コーポレートファイナンス」の定義を以下に紹介します。 「コーポレート・ファイナンスとは、2年から10年先までの意思決定。企業が資金調達し、その資金を事業に配分して企業価値を高めるための効率的な財務戦略」「キャッシュマネジメントとは、半年から1年先までの意思決定。資金管理、資金繰り、現金出納などの実務的な業務(トレジャリー)や資金計画、為替管理、金利管理等の意思決定に関わる業務」 (出典:「キャッシュマネジメント入門」(p.210)(西山茂編著 東洋経済新報社) 2013年) (注.本項では、「企業」と「会社」を区別せず、「企業」に統一します。) 2. 企業価値とは (1) 企業価値の定義 「企業価値」もまた一意に確立した定義はなく、誰にとっての何のための価値かによって、定義と価値の算定方法は様々あります。また類似の用語として「事業価値」、「株主価値」という用語があります。それらは一般的には次のように定義されています。 ① 事業価値 「事業価値」とは、事業が生みだす将来キャッシュフローの価値です。バランスシートの資産と負債を、事業用と非事業用(主に金融資産)に区分し直し、事業用の資産と負債を評価して計算した価値です。 ② 企業価値 「企業価値」は、「事業価値」に「非事業資産」の価値を加えたもので、「非事業資産」は時価で計算されます。 企業価値=事業価値+非事業資産(時価) ③ 株主価値 「株主価値」は、「企業価値」から有利子負債(デット。他人資本の価値)を減じたものです。簿外債務でも将来のキャッシュアウトとなるものがあればデットとして企業価値から控除します。また、余剰現預金は稼働していないことから企業価値から差し引くこともあります。この場合、現預金のうちどれくらい余剰なのか公開されていないため(おそらく多くの企業においては企業自身、把握していないと思われます)、簡便的に全ての現預金を余剰資産として控除することがあります。 (2) 企業価値の評価方法 企業価値の評価方法も確固とした万能の評価方法はなく、評価の目的や視点に応じて一つまたは複数の評価方法を採ります。大別すると以下の3つの方法があります。 ① インカムアプローチ 企業の将来のキャッシュフローを見積もって評価する方法です。「将来の価値」に着眼した評価方法です。具体的な算出方法は複数あり、代表的な方法がDCF法です。 ② マーケットアプローチ 評価する企業の価値は、事業の内容や規模が類似の企業の価値と同じであろうという考えを前提に評価する方法です。「評価関係者間が納得できる類似性」に着眼した評価方法です。代表的な算出方法は、市場株価法や類似会社比準法です。 ③ バランスシートアプローチ(コストアプローチ) 評価時点での企業の保有資産の価値を算定する方法で、いまその企業を精算したらいくらになるかという視点の方法です。「今の資産価値」に着眼した評価方法です。代表的な算出方法は、時価純資産法です。 (3) 企業価値評価の実例 評価に「見積もる」要素があれば、その見積もり方次第で結果は大きく変わってきます。たとえばDCF法であれば割引率を何%にするか、少し変えるだけで数字をいかようにも作ることができます。そこで、これらの方法は実務の現場ではどのように適用されているのでしょうか。興味深いデータがありますので紹介します。「成長を買うM&Aの深層」(三浦隆之著、創成社、2015年、P.81~83)に、2012年にソフトバンクがイー・アクセスを買収した時の企業価値算定のデータが示されています。以下はすべて同書からの引用です。実務の世界では、算定方法だけではなく、評価をする専門家により大きく算定結果は異なり、最終的には当事者の思惑と交渉により決着がつくことがわかります。 ソフトバンクとイー・アクセスの株式交換比率の算定結果 算定方法 2012年10月1日 2012年11月2日 市場株価基準方法 最大値 7.07 最大値 16.77 共通域最大値 5.27 共通域最大値...続きを読む
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海外子会社の内部統制1. 現状・内部統制の脆弱性 3. 不正のトライアングル 4. クラウドTMSによる不正対応 5. まとめ -リスク最前線に立つ財務部門 1. 現状・内部統制の脆弱性 1.1. 後を絶たない不正 海外子会社の内部統制に関して、不正行為は後を絶たず過去の新聞記事から企業不正を検索すると直近から数多くの事例がヒットします。1か月間で4、5社の不正事例が報道されている時もあります。 大手企業での主な不正事例を挙げるだけでも相当の紙幅を費やしてしまいますので、財務不正の点で特徴的なケースを1件挙げます。日本を代表する電機メーカーA社の子会社B社の経理部財務マネージャーが、8年以上に亘って着服を繰り返し、被害総額が15億円以上に上ったということが発覚しました(2014年)。不正の手口は、現金の抜き取り、小切手の不正、ファームバンキングの悪用など多様でした。隠蔽の手口は、銀行残高証明書、現金出納帳、印章請求簿などの偽造・改ざんと不正仕訳で、動機はギャンブルによる借金でした。結果として、そのB社の社長と常務が辞任し、A社の社長と常務が3か月の減俸処分となりました。 この不正事例のポイントは、 十分な内部統制を構築してきたはずの最大手メーカーでも起きました。 8 年以上の長期に亘って着服が継続していました。 多くの日本企業が利用しているファームバンキングも悪用されました。 証憑として信用度が高いとされる銀行残高証明書などが偽造・改ざんされました。 特に、次の 2 点は、多くの事例でよく見られる特徴です。 ①いまだに残高証明書等の書面が改ざんされること ②発覚まで5年、10年等長期に亘って不正が繰り返されていること 不正の額と影響範囲も大きくなっていることも指摘できそうです。2015 年に住宅資材・住設機器メーカーC社で起きた買収先の子会社D社(メーカー持ち株会社から見るとひ孫会社)の不正では、連結子会社にしてから2週間後に不正が発覚し、翌月には D 社について債務超過による破産の申し立てが行われ、その2か月後には破産しました。C 社は D 社の借入金に関する債務保証が 330 億円、D 社株式の毀損が 300 億円、計 630 億円の損失となりました。 東京商工リサーチによれば、2015 年度の不適切な会計・経理を開示した上場企業は過去最多の58社で、着服や利益水増しなどの粉飾が6割以上を占めたとあります。発生当事者別では子会社・関係会社が 26 社(45%)で、ほぼ半数となっています。市場別では東証1部が 29 社と半分を占めています*。 * 「不適切会計・経理の上場企業、過去最多の 58 社 15 年度」『日本経済新聞』2016 年 4 月 14 日。 不正は遅くとも古代ギリシャのオリンピックからあり、古代ローマ帝国になると、皇帝アントニヌスが「自省録」で不正について哲学的に思索しているくらいですから、既にかなり横行していたのでしょう。仮に人間の性として不正を完全になくすことはできないとしても、現代では一つの企業に無数のステークホルダーが国内外にいます。不正に適切に取り組み、企業価値を守らなければなりません。...続きを読む
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クラウドじゃないなんて大丈夫 !? クラウドのセキュリティ考察一般に、クラウドで提供されるサービスに対する不安や疑問は、システムセキュリティに関するものが大半を占める。システムを知る者からすると杞憂なのだが、システムを知らない人からすると「大事な会社の情報資産を他社に預けて大丈夫なのか」という理由を挙げるケースが少なくない。最近は、クラウドの浸透と共にシステムを理解する人も増えてはいるが。 ネットワーク上のセキュリティがそもそもどういうものかを考えてみて欲しい。サーバーがクラウドにあっても、オンプレミス(社内)にあっても、ネットワークから侵入する場合は物理的な場所はあまり関係ない。しかし、クラウドとオンプレミスの最大の違いは、安全性を担保するためのスケールメリットがクラウドにはあるということだ。 オンプレミスではハードウェアの違い、ネットワーク構成の違い、バージョンの違いなど、アカウント毎に構成が異なるため、その構成に特化したメンテナンスと対策が必要だ。また、まったく同じ構成が他にないため、これら全ての構成に関して最新のセキュリティ対策を常に把握しなければならないが、現実的には常時このようなレベルの対応をすることはほとんど不可能だ。 しかし、クラウドにあるサービスではハードウェア、OS、ミドルウェアなどを徹底管理しており、同じ構成のシステムを大量保持するため、セキュリティについても常時対応できる。 つまり、セキュリティ投資にも規模の経済が成り立つのがクラウドの利点である。複数の利用者が同一のシステムを利用する事で、最新かつ高度なセキュリティレベルを享受することができる。実はオンプレミスシステムだけでなく、クラウド風ASPにも落とし穴が潜んでいるので、注意が必要である。 乱暴な言い方になるかもしれないが、クラウド事業者の最新かつ高度なセキィリティレベルと同等以上のセキュリティを自社の所有するアプリケーションで提供している企業があれば、紹介してもらいたい。すみやかに大規模なシステム費用削減の提案を実施させて頂くことが可能なほど、膨大な労力と費用がかかっているはずだ。 以下、特に留意すべきセキュリティに関するポイントを挙げる。 セキュアで災害に強い複数のデータセンター SSAE16(前SAS70)に準拠しているかどうか。ISO 9001 と ISO/CEI 27001 の認定を受けているかどうか。 サービスレベルと冗長性 SLA(サービスレベルに関する合意)にて稼働率に対する保証があるかどうか。クラウド環境が複数拠点で冗長化、バックアップされているかどうか。稼働率を契約上保証しないサービスも多い。 レプリケーションとバックアップ 障害や災害が発生した際のデータの安全性確保に向けて確立された運用体制が敷かれているか。 災害復旧と業務の継続 障害回復の指標として、RTO(目標復旧時間)、RPO(目標復旧時点)が高いレベルで設定されているかどうか。RTO、RPOが設定されていないにもかかわらずクラウドを名乗るサービスも多い。 拡張性が高く柔軟なアーキテクチャー お客様の利用状況にあわせた大規模ユーザー増加やシステム負荷分散といった拡張が柔軟に行えるかどうか 他にも、ウィルス対策や侵入監査、データベースの暗号化、認証といった様々な領域で最新で高度なテクノロジーが目白押しである。 いかがだろうか? 自社のアプリケーションのセキュリティレベルの高度化に金を遣うのであれば、その同等の金額を何か別のものに振り替えることを強くお勧めする。なんとなく不安だからと言って、多額の金を競争力のない自社アプリケーションのセキュリティに投資し続けることこそが問題であると強く訴えたい。 (作成) 2015/8/18続きを読む