Success Story

コニカミノルタ

Abstract background of train transportation rush hour in japan multiple exposures.

コニカミノルタについて

コニカミノルタは、複合機(MFP)やデジタル印刷システムなどの情報機器、ヘルスケア機器、産業用材料・機器など、幅広い製品やソリューションを全世界のマーケットに提供しており、その売上の約 8 割を海外が占めています。同社は、グローバル財務管理基盤の構築を目指して Kyriba を導入、資金の可視化によるキャッシュの半減、効率的な為替リスクヘッジ、国内関係会社間決済のキャッシュレス化など、多方面にわたる成果が現れました。

グローバル資金の一元管理がグループ全体の保有キャッシュ半減に大きく貢献

コニカミノルタは、グローバル財務管理基盤の構築を目指して「キリバ・エンタープライズ」を導入。資金の可視化によるキャッシュの半減、効率的な為替リスクヘッジ、国内関係会社間決済のキャッシュレス化など、多方面にわたる成果が現れた。グループ全体の財務に関する意識改革が成功の礎となったようだ。

Konica Minolta - Implementation Objective

意外に大きかった新興国通貨の影響

複合機(MFP)やデジタル印刷システムなどの情報機器、ヘルスケア機器、産業用材料・機器など、幅広い製品やソリューションを全世界のマーケットに提供しているコニカミノルタ。売上高 1 兆 28 億円(2015 年 3 月期 IFRS)の約 8 割を海外が占め、特に米国と欧州での売上げが大きな割合を占めている。

同社が「キリバ・エンタープライズ」を導入したのは、グループ全体が持つ外貨ポジションの内訳をより正確でタイムリーに把握したいということがきっかけの一つだった。

コニカミノルタの財務部長である大森弘之氏は、次のように振り返る。

「2013 年 6 月、当時の FRB(米連邦準備制度理事会)のバーナンキ議長が量的緩和の縮小と引き締めを行うと発言し、世界の金融市場が動揺した『バーナンキ・ショック』によって、当社の外貨ポジションも少なからぬ為替差損を被った。欧米の売上高比率が高いので、ドル、ユーロについてはある程度リスクヘッジを行っていたが、このショックによって、当社グループが保有するトルコリラやブラジルレアル、ロシアルーブルなどの新興国通貨からも想定以上の為替差損が発生、グローバルベースでの十分な為替管理ができていないことに気づいた。海外子会社が新興国通貨建てのポジションをいくら持っているのかを本社が正確かつリアルタイムに把握し、管理することの重要性を痛感した」

– コニカミノルタ財務部長 大森弘之氏

当時コニカミノルタは、2014 年度からスタートする中期経営計画「トランスフォーム 2016」の策定作業を進めており、財務分野の中期計画に「エクセレント・カンパニーにふさわしいグローバル財務管理基盤の構築」(大森氏)を目標の一つとして盛り込んだ。そして、高度なグローバル財務管理基盤を有している企業からのアドバイスも参考にしつつ、財務中計を実現するソリューションとして、クラウドのトレジャリー・マネジメント(財務管理)アプリケーションであるキリバ・エンタープライズを導入した。

資金可視化による手元キャッシュの削減

実はコニカミノルタ財務部は、すでに 2008 年頃からグローバルな財務プラットフォームの構築について検討を進めていた。

しかし「当時は各企業が自ら財務プラットフォームを構築するしかなく、多額の初期コストに加え、世界に広がるグループ全体に導入するとなると、バージョンアップやリプレイスのたびに手間や運用コストがかかることなどが大きなネックだった。投資に対して、期待できる効果がなかなか見えなかった」(大森氏)

その点、クラウドベースのアプリケーションなら、独自に構築するよりも安価に導入でき、バージョンアップもプロバイダー側が行うので手間や運用コストを抑えられる。しかも、新たに拠点を設けたり、M&A 等によって子会社が増えたりしても、比較的容易に基盤が拡張できる。2015年度だけで海外で 2 桁を超える企業を買収したコニカミノルタにとって、そうした柔軟性は大きな魅力であった。

コニカミノルタ財務部は、キリバ導入に当たって、①資金の可視化、②グローバル為替管理の強化、③関係会社間の決済におけるインハウス・バンキングの活用という 3 つの大きな目標を掲げた。そして、その成果は着実に表れているようだ。

まず、資金の可視化によって、子会社や関係会社などが抱えている余分なキャッシュを洗い出せるようになり、グループ全体のキャッシュを導入前の約 2,000 億円から約 1,100 億円に圧縮することができた。

「ROA(総資産利益率)改善のためにも余分なキャッシュを減らすことは不可欠だが、グループ全体の保有状況が見えなかった時は、財務の安全性確保のため過分にキャッシュを抱え込んでしまう傾向があった。それをほぼ半減できたことは非常に大きな成果だ」

– コニカミノルタ財務部長 大森弘之氏

キャッシュが半減したにもかかわらず、2 桁を超える M&A を実現しているのだから、投資効率が格段に向上しているのは明らかである。日銀のマイナス金利導入によって、キャッシュを抱え込むほどコスト負担が増すことも懸念されているが、資金の可視化によるキャッシュの圧縮は、その対策としても期待できそうだ。

一方、グローバル為替管理の強化は、「キリバの導入により、グループ全体が保有する複数の新興国通貨のポジションにも意識が向かうようになった」と大森氏は語る。特に欧州の各拠点は、ユーロに加盟していない北欧や東欧の通貨、英ポンドなども保有しているが、日本の本社からは、それぞれの拠点がどの通貨をいくら保有しているのかが見えにくい状況であった。それが本社からでもモニタリングが可能となり、全世界の通貨ポジションのバランスを考慮した日本発のアドバイスや指示が発信できるようになった結果、為替リスクへの対応がより効率的になった。

積極的な働きかけでグループ全体の変革を促す

3 つ目のインハウス・バンキングの活用は、グループ全体の財務コスト削減や業務効率化に大きく寄与しているようだ。大森氏によると、「コニカミノルタの国内取引による決済のうち、関係会社間の決済取引は約 3 割にも上る。これをキリバのインハウス・バンキング機能によってキャッシュレス化した。銀行に支払う手数料が減っただけでなく、振込データの作成や手形の発行・受け渡しの手間もなくなり、グループ全体の財務業務コスト削減に結びついている」という。

資金の可視化や為替リスクの低減だけでなく、キリバ導入によって財務業務のあり方そのものまでも大きく変えたようだ。

コニカミノルタは、トレジャリー・マネジメントに限らず、CRM ツールなど、さまざまなクラウドベースのサービスを積極的に採り入れ、業務変革を力強く推し進めている。そうしたイノベーティブな取り組みができるのは、司令塔となる部門がグループ全体に積極的に働きかけ、意識改革を促す風土があるからだ。キリバ活用による財務管理改革も、大森氏率いる本社財務部が、各関係会社に意義やメリットを熱心に説明し、理解の輪を広げていったという。

「努力の甲斐あって、国内部門については、3 つの目標をほぼ達成できた。今後は海外拠点を含むグループ全体の資金の可視化、為替管理の強化、インハウス・バンキングの活用をいま以上に促すことが課題だ」と、大森氏はすでに次の展開を見据える。