トレジャリーの見える化
「見える化」という用語 「見える化」とは 財務体質改善・最適化のための見える化 財務コスト削減のための見える化 リスク管理のための見える化 見える化を進めるうえでのポイント 「見える化」という用語は、日常のビジネスの現場で頻繁に使われています。しかしながら、しばしば「見える化」が目的と化したり、見ていたはずのところで大問題が発覚したりします。また子会社の買収や担当の異動などにより、新しい管理対象ができた時に、どこから何を見ていったらよいのかアイデアが浮かばない時もあります。 そこで本項では、そもそも「見る」とは何のために何を見ることかをおさらいした上で、トレジャリーの何を見るかについての主なポイントを説明します。 1. 「見える化」という用語 「見える化」という言葉は、製造業の現場で古くから使われていた用語で、代表的な例はトヨタの「あんどん」や「カンバン」です。一般のビジネスの現場で「見える化」という用語が広く使われるようになったのは管見では、遠藤功氏の著書、 『見える化 : 強い企業をつくる「見える」仕組み』 (東洋経済新報社、2005年)が大きなきっかけになりました。 2. 「見える化」とは 2.1. 何のために「見る」のか 何のために「見る」のでしょうか?それはとりもなおさず、 問題を発見するために、見る ということです。トヨタでは、2005 年に社長に就任した渡辺捷昭氏は、就任時のインタビューで次のように語っています。 「成長している時は問題点が潜在化して見えなくなる。開発や調達、生産、販売など各部門が抱えている兆候を『見える化』し、何が足りず何を補強すべきなのか明確にする。」 (出典:「渡辺トヨタ社長に聞く 現状維持は衰退と同じ」日本経済新聞、2005年7月2日付朝刊) すなわち、見た時に特に問題がなかったということがあればそれは、見方が悪いということかもしれません。 2.2. 「見える化」の本質とは (1) 「視覚」の重要性 遠藤氏の著作が「見える化」の本質について整理していますので、以下同書に拠りながら、「そもそも『見える化』とはどういうことか?」について振り返ることにします。遠藤氏は、「『見える化』ではなく『見る化』になっていないか?」と指摘して、次のように書いています。 「人間の行動を誘引するために何より重要なのは、実態や問題を包み隠さず、タイムリーに『見える』ようにすることだと言えるはずだ。人間が本来持っている責任感や能動性、やる気を信じて、企業活動上のあらゆる問題や事象を顕在化させ、『視覚』に訴えていくことこそが、『見える化』の本質なのである。」 (同書 p.21,...
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