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銀行接続のデジタル化が、資金配置を最適化する上でなぜ重要なのか


確信を持って資金を特定し利用できる企業は、現在、戦略的な価値創造のための資産として流動性を活用することができます。これは、しばしば見過ごされていたり、利用できなかった競争優位性ですが、デジタル化された銀行接続の進歩により、現実となりつつあります。組織がどのように資金を動かし、管理し、保管し、守るのかは、他の資産と同様に、コスト、ベネフィット、リスクが伴います。Alphabet 社の CFO の Ruth Porat 氏が述べる通り、「流動性が聖域であることに疑いの余地はありません」。今日、多くのリーダー企業は、流動性を資産として扱い、それを市場の武器として利用することができることを認識しています。

企業の流動性管理の実践は、最近の金融、地政学、貿易、公衆衛生の危機により、ますます頻繁に流動性の混乱が起こるという「ニューノーマル (新常態)」に直面しています。これらの要素は、新しい金融・支払チャネルへのアクセス要求、より高度化した不正の手口、新しい地域や通貨により良く、より速く、より安価にスケールアップするというビジネスからの要求によって複雑化しています。プロアクティブに流動性を管理できないということは、最重要資産のひとつである手元資金を見失ってしまうことを意味します。PwC の推定では、企業が保有する資金の 25% が財務部門からは見えていないとされています。

合理化されたソリューション

企業内の ERP システム、取引プラットフォーム、銀行間を独自の方法でそれぞれ個別に連携する従来のアプローチでは、資金の最適化に必要な全体を俯瞰する視野を獲得することは不可能でした。その結果、流動性のプールは相互に分断され、ビジネスの成功は限られたものになりました。さらに、銀行や支払システムごとに独自の資金を配置することは、コストと時間のかかる作業でした。しかし、合理化された革新的な流動性管理のソリューションにより、こうした課題を解決し、変化するビジネスニーズに対応することができるようになりました。

今こそ、日々の業務をシンプルなものとして、次世代の流動性管理を可能にする銀行接続のアプローチを構想すべき時です。現在では、一貫性のあるインターフェースと API を使用してプロセスのあらゆる側面を統合することで、新しいアイデアのみならず、アイデアをサポートするテクノロジーサービスの新しいアプローチを備えるソリューションがあります。

次世代の流動性最適化:
CaaS = サービスとしての銀行接続

従来のアプローチの限界は非常に深刻で、企業の流動性管理を実現するための新しいデジタルサービスは、最優先のプロジェクトでなければなりません。旧来の方法に固執する組織は、危険にさらされるでしょう。例えば、AFP (Association for Financial Professionals) による最近の調査では、 68% の組織が支払詐欺のターゲットになったことがあるとわかっており、その状況においては、不正行為を阻止し、支払管理を実施する能力が大きく損なわれていることになります。

さらに、組織を銀行に接続するのに 3 ヶ月〜 9 ヶ月もかかっては、ビジネスの機敏性 (アジリティ) を持つことはできません。最も有望な方法は、一貫性があり、全体的で、文書化され、安全な流動性管理を提供するあらゆる側面において、CaaS (Connectivity-as-a-Service)、すなわち「サービスとしてのコネクティビティ」を用いたアプローチを実現することです。そうすることで、企業はすべての流動性に関わるパートナーと迅速性と堅牢性をもって接続し、ニーズの変化に応じて、流動性に関するサービスプロバイダーをより容易に適応させることができます。

クラウドレジリエンスと API

流動性最適化のために、企業は最新のテクノロジーを基盤として設計されたサービスを導入する必要があります。「as-a-Service モデル」 (サービスとして提供されるモデル) では、クラウドプラットフォームを利用することで、企業は使用量に応じた支払いすればよいため、このアプローチの核となります。さらに、回復力、バックアップ、セキュリティ、システム管理など、IT インフラに関わる多くのタスクは、サービスプロバイダーが行います。そのため、社内の IT 部門は、可能な限り高付加価値業務に集中することができます。

また、次世代のソリューションでは、API やあらかじめ組み込まれた統合機能を使用することで、システム全体のさまざまな側面の連携を大幅に簡単化することができます。この場合、ERP システムと取引プラットフォームを、より迅速かつ正確に連動させることを意味します。一貫性があり、文書化された API と統合機能を使用することで、設定時間を大幅に短縮できるだけでなく、将来の変更も簡単に実施でき、手作業によるミスをなくすことができます。簡略化された統合機能と相互作用によって、CaaS (サービスとしてのコネクティビティ) を実現します。

図 1. 多様な企業向け支払チャネル – 今後も新規チャネルがローンチ予定

Payment channels available to corporate via bank connectivity options

データの一元化

もうひとつの大きな特徴は、データを一元化して保管することです。そうすることで、AI などの分析ツールを使って、より実効性のあるインテリジェンスを導き出すことができます。銀行プラットフォームの変更に伴い、銀行が新たなフォーマットのファイルやその受け取り方法を要求する中、最新の銀行仕様ライブラリが用意されていることで、企業の IT 部門は、これらの絶えず変化する銀行フォーマットへの対応やシステムの構築およびテストを行う必要から解放されます。最後に、最新のプラットフォームには、必要なすべてのアプリケーションやソリューションがイ一元化された単一のプラットフォームに備わっています。流動性最適化には、トレジャリー、リスク、支払、ワーキング・キャピタルを管理するアプリケーションやソリューションが含まれます。

流動性への CaaS (サービスとしてのコネクティビティ) を利用するメリットは計り知れません。ひとつは、銀行のオンボーディングコストの削減をはじめとする、短期的なコスト削減効果が大きいことです。Kyriba が顧客やパートナーと協働してきた経験から、そのコストは、通常 5 万ドルから 15 万ドルであることが分かっています。しかし、Kyriba の確立された、実績のある銀行接続機能と最新の CaaSソリューションを使えば、このコストを 50% 以上削減することができます。また、統合機能を修正したり、新規で作成したりする際のスピードや機敏性も向上します。このようなプラットフォームを利用することで、本稼働までの期間も 2 〜 3 倍早くなります。

図 2. 取引のデジタル化に伴う支払のトランザクション量の増加

Payment volumes increase

不正対策

統合されたビューと包括的なレポートにより、潜在的な問題の特定とその解決がはるかに容易になるため、不正や誤送金を大幅に減らすことが可能になりました。さらに、文書化された一連の統合と強力なプロセスにより、不正につながるミスが発生する可能性はほぼ排除されます。包括的なデータセットがあれば、企業は流動性の流れを簡単に分析し、最適化することができます。異なるスプレッドシートを手動で統合するマージする時代は終わりました。

このような情報は、組織が流動性を改善し、流動性をより効果的に利用するための変化をもたらすために必要なインサイトも提供することになります。この種のサービスが提供する流動性に関する信頼できる唯一の情報源が持つ価値は無視できないものです。

事業のオペレーションの観点からは、デジタル基盤として CaaS (サービスとしてのコネクティビティ) を持つことで、以下のことが可能になります。

  • キャッシュの全社的な利用のための戦略的な計画策定
  • IT リソースの負担の最小化しつつ、銀行パートナーの新規追加・削除を効率的に行える機敏性のあるバンキング・プラットフォームを事業へ提供
  • 銀行手数料の最適化
  • 特定のシナリオに基づく、最適な支払チャネルの決定
  • 不正行為の管理を一元化
  • 規制やコンプライアンスに対応するための基盤確立

しかし、すべての流動性を追跡する包括的なソリューションがなければ、そのメリットははるかに限定的なものになります。その結果生じる盲点は、システムが追跡していない流動性に影響を与えるだけでなく、すべての流動性にも影響を与えます。部分的な導入では、財務担当者は、まだ何も頼るものがない状態で行動しているのです。

ELM: 企業流動性管理

成功を収めている進歩的な企業は、ビジネスのあらゆる要素を最適化するために新しいサービスやテクノロジーを導入しており、現在では、流動性管理にますます注目が集まっています。レガシープロセスは、以前はうまく機能していましたが、優位性を求めるすべての企業が、全社的な企業流動性管理 — 「ELM (Enterprise Liquidity Management)」を実現するため次の一歩を踏み出しています。Kyriba の企業流動性管理プラットフォームのような新しいサービスは、従来の方法では不可能だった機能とインサイトを提供します。

流動性のあらゆる側面に一貫した全体的な視点をもたらすサービスを基盤とすることで、企業は、かつてないほど流動性を最適化する力を得られます。この包括的な視点によって、企業はすべての銀行、決済代行業者、財務部門にわたって流動性を最大化することができます。また、このデータを使用することで、企業はより良い長期的な意思決定を下すことができ、将来に向けて自らを位置づけることができるのです。

さらに、これらの新しい機能は、新しい銀行や処理を追加するために必要な時間を短縮し、それに伴うコストを劇的に削減することができます。IT 部門は、より迅速に、CFO が確信を持って為すべきことに取り組み、目標を達成することを支援できるようになったと言えるでしょう。