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データ = 資金予測の秘密兵器

By Thomas Gavaghan
Vice President, Global Presales


過去データは資金予測のプロローグ・基礎情報になり得るのでしょうか? — 統計モデリングと機械学習を使用する場合、その答えは「Yes!」です。CFO や財務担当者は、これまで以上に多くの過去データを利用できます。正しく使用すれば、予測はより正確で行動に移しやすいものになります。

資金予測の精度向上

これまで、企業はシンプルな過去のモデルを使用して将来のキャッシュフローのニーズを予測していました。これは過去のキャッシュフローのパターンを見て、それらを基本的な代数的手段 (ジョークまじりの表現です!) で未来に展開することを意味していました。しかし、この方法は、企業が大量のデータを活用して重要な財務決定を行う必要がある今日の急速に変化するビジネス環境では、もはや完全に実行可能なものではありません。

現在、企業は先進的な統計モデリングと AI を利用してキャッシュフローのニーズを予測しています。このアプローチはより高い精度を提供し、企業に環境の変化に適応する柔軟性を提供します。

今日の市場では、キャッシュフローは実際にビジネスの命綱です。資金繰りが厳しくなる中、給与や取引先への支払といった短期的な責務を遂行することが一部の企業にとっては課題を含むものとなってきています。信用枠を利用したり短期借入をすることが、(海外において) 金利上昇が続く中でますます高コストになっています。

資金予測における課題

予測をどの程度、洗練されたものとするかに関係なく、組織はまず、過去の実績について明確な理解を持つ必要があり、これにより将来のキャッシュフローをしっかりと把握することができます。過去のデータは大量で、内部で作成したシステムやスプレッドシートを使用すると、管理が難しくなることがあります。これらのソリューションが企業の大量の資金データを保持する能力は現実的ではありません。通常、これらのプラットフォームで管理されるデータはとても集約・集計されており、さまざまなアルゴリズムを適切に実行するために必要な詳細なデータが欠けています。

さらに、現代の企業は常に進化し、変化し続けています。つまり、現在のビジネスのキャッシュフローのニーズは、過去のものとは異なる可能性があるのです。

分位数回帰 (Quantile Regression) による資金予測

分位数回帰のような統計的手法は、組織に「説明変数」 (過去データ) の効果をキャッシュの入金と全体的な資金残高 (予測) の分布に対して推定する能力を与えます。これらの説明変数には、会社の口座に入ってくる過去データ上のキャッシュの通貨、入金の日付 (週と月の時間を含む) 、キャッシュにかかる活動の種類、特定の時間範囲での金額などが含まれるかもしれません。分位数回帰を使用して、過去の実績が分布の50 パーセンタイル (中央値) 、75 パーセンタイル (上位 1/4 ) 、90 パーセンタイル (上位 1/10) などにどのような影響を与えるかを推定することができます。

単純な中央値と平均レベルの計算に依存するほとんどの予測モデルとは異なり、分位数回帰は、予測される資金の全分布に対するヒストリカルな実績の影響を推定するために使用できます。これは重要であり、なぜなら、予測される分布は平均や中央値とは大きく異なる可能性があるからです。

例えば、企業の平均と中央値の資金残高を用いると、明日の資金レベルを 600 万ドルと予測するかもしれませんが、ヒストリカルな資金残高の分布は、残高の周期性のために非常に歪んでいます。つまり、過去のいくつかの日は平均や中央値以下の残高を持ち、前期の終わりに向けては平均や中央値以上の資金残高のバッファを持つ日が少数あるかもしれません。他の標準的な予測方法と比較して、分位数回帰は、基礎となる応答変数に対して直線的に関連していない変数の影響をより良く推定し、外れ値 (Outliers) に対してはより敏感ではありません。

分位数回帰の導入

この話題が予測に関する議論にしばしば取り上げられるのは、「万能なアプローチ (one-size-fits-all)」が存在しないためです。加えて、全体の予測に対する要素は、多くの場合、異なる手法と計算モードを使用して導き出されます。

予測プロセスで分位数回帰のような高度な計算を活用する一つの欠点は、それが計算上非常に集中的であることです。これは、予測の精度を保証するために大量のデータとパラメータに依存しています。大量の過去データ、複数の変数 (日付、通貨、キャッシュの分類、地理情報等) にわたる計算は、スプレッドシートのような一般的な予測ツールではとても太刀打ちできません。また、組織が IT 部門や財務部門に在籍する人的リソースを持ってこれらのモデルを自社開発することは稀なことでしょう。

組織はまず、必要なデータにどのようにアクセスするかを見つける必要があります。これは貴社の ERP、貴社の元帳、社内のデータレイク、あるいは貴社のトレジャリー・マネジメント・システム (TMS) に存在するかもしれません。効果的な結果を得るためには、通常、より大きな過去データ群が必要です。特に現代のビジネスにおけるキャッシュフローに影響を与える変動性を考慮に入れると、30 日間の過去データに基づいて予測を立てるだけでは十分ではありません。

今日利用できる製品の技術は、財務部門に現在と過去の流動性データへのアクセスを提供するだけでなく、分位数回帰のような高度な計算を実行するためにこの豊富な過去データを参照する組み込みアルゴリズムをも提供します。

最終的に、財務部門 (ファイナンスおよびトレジャリー) で協力し合い、モデルで優先する説明変数を特定し、同時に特定の変数をモデルから排除するなどして、仕上げていきます。

財務部門に武器を与える

現在の市場の混乱を乗り切る上で、財務部門にとって、より良い流動性計画とその管理のために最新の技術を活用することは、ひとつの武器となり得ます。これにより、業務上の責務が遂行され、ワーキング・キャピタルの最適化が担保されます。他のデータソースとインプットを計画プロセスに組み込み、高度な統計的計算方法を導入することによって、財務部門は、短期的な流動性の重要な予測において優位性を獲得します。総じて、分位数回帰は資金予測の精度を向上させるために使用できる強力なツールとなるでしょう。

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