「キャッシュ・マネジメント・システム (CMS)」とは?
1. キャッシュ・マネジメントとは キャッシュ・マネジメント・システム (CMS) という用語に統一的な定義があるわけではありません。邦銀では主に国内の事業法人向けのグループ会社間の決済取引の効率化や流動性管理の高度化のためのキャッシュ・プーリングやグループ貸借管理、ネッティング、支払代行等のソリューションを CMS (Cash Management System) と呼び、クロス・ボーダー取引に関する同様のソリューションを GCMS (Global Cash Management System) と呼ぶ場合が多いようです。これに対し、欧米の銀行はこれらにとどまらず、以下のような決済取引や運用調達取引まで含めて国内外を区別することなくキャッシュ・マネジメントと呼ぶ場合が多いようです。 欧米でのキャッシュ・マメネジメントの対象 支払取引(取引先への国内および海外送金/給与支払/税金支払、電信送金/小切手支払/手形支払/口座振替/現金支払、法人用クレジットカード) 回収取引(取引先からの国内および海外送金/小切手回収/手形回収/口座振替/現金回収、売掛金消し込み) グループ取引管理(キャッシュ・プーリング、ネッティング、支払代行) 流動性預金(普通預金/当座預金/当座貸越) 運用商品(定期預金、通知預金、MMF) サプライ・チェーン・ファイナンス エレクトロニック・バンキング(EB) ファーム・バンキング(FB) インターネットバンキング インターバンク・クリアリング かつては複数の銀行に開設された口座の残高や入出金の「見える化」いわゆる資金の可視化はキャッシュ・マネジメントの範疇には含まれていませんでしたが、現在では資金の可視化はキャッシュ・マネジメント・ソリューションの第一歩として位置付けられるようになってきています。 キャッシュ・マネジメント・システムという用語に統一的な定義があるわけではなく、キャッシュ・マネジメント・ソリューションを全て取り扱うパッケージ・ソフトウェアがあるわけでもありません。たとえば、インターネット・バンキングで送金を行う場合、送金内容の入力と送信を行うためのブラウザ上で動くアプリケーションと銀行内部の資金決済関連システム(口座引き落としを行う預金勘定系システム、全銀ネットと接続する国内振込システムやSWIFTに接続する海外送金システムや外国為替システム)など様々なシステムの連携でサービスが提供されます。また、同一銀行内のプーリングでは、銀行の預金勘定系システム内の預金残高の付け替えや利息計算の仕組みを利用してサービスが提供されます。このように、「キャッシュ・マネジメント・システム」と呼ばれる独立したシステムがあるわけではありません。また、日本国内ではファーム・バンキング(FB)※1やANSER※2と呼ばれる日本独自のファイル・フォーマットやプロトコルやネットワークを利用して、マルチバンクにアクセスできるようになっています。 *1 ファーム・バンキング:全国銀行協会(全銀協)が定めたレコード・フォーマット、プロトコルで企業と銀行間で銀行取引データの送受信を行うもの。統一のフォーマット、プロトコルで通信を行うため、企業側では一旦対応するシステムを構築すれば複数の銀行とデータ送受信を行うことができる。マルチバンクアクセスが強みであるが、ISDN回線サービス終了の問題がある。銀行での取引処理は一般的には一定期間のデータをまとめて処理するバッチ処理であり、リアルタイム処理ではない。総合振込、給与・賞与振込、株式配当金振込、海外送金、輸入信用状開設、輸入手形決済、輸出手形買取・取立、為替先物予約、外貨預金取引明細照会など幅広い取引を対象としている。 *2 ANSER:株式会社NTTデータが提供するANSER(=Automatic answer Network System...
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